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質問主意書 : 表題
提出日
答弁書受領日
【保険会社による保険金不払問題の実態解明と抜本的対策に関する質問主意書】
 参議院議員 荒井広幸
平成19年06月04日
平成19年06月12日
【世界経済の中で没落を続ける日本経済と骨太方針二〇〇七素案に関する質問主意書】 
  衆議院議員 滝 実

平成19年06月06日

平成19年06月15日
【ETCシステムにおける新たな利用者負担の解消とORSEの廃止等に関する質問主意書】
 参議院議員 荒井広幸
平成19年05月07日
平成19年05月15日
【国有林資料の保存に関する質問主意書】 衆議院議員 滝 実
平成19年04月24日
平成19年05月11日
【地球温暖化問題等に関する質問主意書】 参議院議員 荒井広幸
平成19年04月19日
平成19年04月27日
【平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問主意書】 
  衆議院議員 滝 実 
平成19年04月17日
平成19年04月27日
【都道府県が発注する公共事業の竣工式の実施等に関する質問主意書】 
  参議院議員 荒井広幸
平成19年04月13日
平成19年04月24日
【スマートインターチェンジの許可基準及び整備手順の明確化等に関する質問主意書 
  参議院議員 荒井広幸

平成19年04月11

平成19年04月20日
【経済モデルによるシミュレーションに関する第三回質問主意書】 衆議院議員 滝 実
平成19年03月23日

平成19年04月03日

【夕張市の財政再建に対する国の対応に関する質問主意書】 衆議院議員 滝 実
平成19年03月20日
平成19年03月30日
【夕張市の財政再建案の作成に関する質問主意書】  衆議院議員 滝 実
平成18年12月07日
平成18年12月15日
【消費者金融利用者及び多重債務者等の実態解明等に関する質問主意書】 
  幹事長 参議院議員 荒井広幸
平成18年09月29日
平成18年10月10日
【耐震強度偽装事件支援策に関する第三回質問主意書】 
  総務会長 衆議院議員 滝 実
平成18年03月10日
平成18年03月22日
【耐震偽装事件公的支援策で再質問主意書】 総務会長 衆議院議員 滝 実
平成18年02月14日
平成18年02月24日
【耐震偽装事件支援策に異議あり】 総務会長 衆議院議員 滝 実
平成18年02月02日
平成18年02月10日

 

保険会社による保険金不払問題の実態解明と抜本的対策に関する質問主意書

 参議院議員 荒井広幸

 平成十七年二月の金融庁による明治安田生命に対する行政処分以来、生命保険、損害保険を問わず、保険会社各社によるいわゆる保険金の不払事案の発覚が後を絶たない。平成十七年十月二十四日の参議院行政監視委員会における私の追及に対して、すべての保険金、給付金の不払事案に係る再検証を要請しており、漏れはないとした答弁は、全くの欺瞞であったことが判明した。ここに至るまで保険金不払の実態を放置した金融庁の責任は極めて大きく、国会軽視という問題以前に、監督官庁である金融庁自身がコンプライアンスを欠いていると言わざるを得ない。この際、金融庁はこれまでの監督の怠慢を反省した上で、「保険金等の不払」の全体像を把握し、その中にどのような「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」があるかを、徹底的に実態解明しなければ、金融行政、保険業界の信頼回復に将来の禍根を残すこととなる。また、今般の保険金不払問題は、国民一般のリスク感性を無視した複雑な保険商品の設計・販売に走る保険業界の体質に根元的な原因がある。適合性の原則を踏まえた行為規制を保険会社に適切に課し、国民一般のリスク感性を踏まえた分かりやすい保険商品の設計・販売を促していかなければ、根本的な解決をみない問題と考える。
 金融庁の怠慢とも呼ぶべき失態により生じた今般の保険金不払問題は、本来、参議院において、財政金融委員会あるいは予算委員会、決算委員会、行政監視委員会などの場を通じて、徹底的に追及されるべき問題と考えるが、残念ながら我が新党日本は委員割当がないことから、本質問主意書をもって、金融庁の姿勢をただすとの観点から、以下質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 平成十七年二月以降、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の実態に関しては、生命保険会社、損害保険会社各社が自主的に点検結果を公表し、また、金融庁も、生命保険会社、損害保険会社各社に対し、保険業法第百二十八条等に基づき、報告徴求を行っているところと承知しているが、その内容等を明らかにする必要がある。以下は、平成十七年の先の委員会質疑を踏まえ、細目にわたり確認を求めるものであり、当時の軽率な答弁に対する反省に立ち、誠意をもって答弁するよう求める。

1 平成十七年二月以降、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の実態に関し、金融庁が行った報告徴求について、その徴求日、対象保険会社、報告徴求の内容、報告期限、報告結果(不適切な取扱いの内容、件数、金額)を示されたい。その際、報告徴求の内容及び結果については、報告徴求に当たり点検の対象となる契約の範囲、実施期間、点検方法及び点検結果に対する対応等を明示されたい。また、報告結果が判明していない場合、その理由といつまでに明らかにされるかを示されたい。

2 1で示された報告徴求とは別に、金融庁において、保険会社に対し保険契約の点検要請等を行っている場合には、その内容とその結果について、点検の対象となる契約の範囲、実施期間、点検方法及び点検結果に対する対応等を1と同様に示されたい。また、保険業法第百三十二条及び第百三十三条に基づく行政処分に際し、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の実態を把握している場合についても、その内容を同様に示されたい。さらに、金融庁が把握している保険会社各社が自主的に行った点検結果について、報告徴求等により金融庁が直接把握している以上の部分(点検の対象となる契約の範囲、実施期間、点検方法及び点検結果に対する対応等)があれば、その内容を同様に示されたい。

3 1及び2以外により、金融庁が保険金の不払の実態等について、把握している情報があれば、その内容を1及び2に対する答弁と同様に整理して、示されたい。

4 生命保険、損害保険を問わず、保険契約全体を調査対象として、保険契約者等に対する直接確認を担保する形で、保険事故の発生により保険金・給付金の支払を受けることが可能であるにもかかわらず、保険金等が支払われていない「保険金等の不払」事案がないか、そのうち個別の事情を勘案して不適切な取扱いがなされたと判断される「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」事案がないか、改めて報告徴求・検証すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
一の1について
 金融庁が、保険会社の保険金及び給付金(以下「保険金等」という。)の支払状況の実態を把握するために、平成十七年二月以降、保険業法(平成七年法律第百五号)第百二十八条第一項等に基づき報告を求め、公表を行った事案の概要については、次のとおりである。
 (一) 生命保険会社
  (1) すべての生命保険会社に対し、平成十七年七月二十六日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年九月三十日までに、平成十二年度から平成十六年度までの間の保険金等のすべての不払の事案について、保険約款、事業方法書等に照らして、保険金等の不適切な不払(保険契約者等から保険金等の請求を受けた保険会社が、不適切な判断により保険金等を支払っていなかったことをいう。以下同じ。)がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。この結果、明治安田生命保険相互会社の保険金等の不適切な不払千五十三件及び明治安田生命保険相互会社以外の生命保険会社三十一社の保険金等の不適切な不払四百三十五件が認められ、その旨を平成十七年十月二十八日に公表した。金融庁は、保険金等の不適切な不払等の問題が認められた明治安田生命保険相互会社に対し、平成十七年十月二十八日に、同法第百三十二条第一項及び第百三十三条の規定に基づき、業務改善命令及び業務停止命令を発出した。
  (2) すべての生命保険会社に対し、平成十九年二月一日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年四月十三日までに、平成十三年度から平成十七年度までの間の保険金等の支払漏れ(保険事故が発生し、主たる保険金等の支払は行われているにもかかわらず、保険会社が、臨時費用保険金等の保険金等について、保険契約者等から請求がなかった等のため、支払っていなかったことをいう。以下同じ。)等がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。生命保険会社が四月十三日時点の進捗状況につき公表を行っており、それによれば、全生命保険会社三十八社のうち三十七社において保険金等の支払漏れ等約四十四万件、保険金等の支払漏れ等の金額約三百五十九億円があるとのことであるが、現在各社は引き続き調査を継続している。
 (二) 損害保険会社
  (1) すべての損害保険会社に対し、平成十七年九月三十日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十月十四日までに、平成十四年四月一日から平成十七年六月三十日までの間に保険金支払事由が発生した事案について、付随的な保険金の支払漏れ(保険事故が発生し、主たる保険金の支払は行われているにもかかわらず、臨時費用保険金等の付随的な保険金について、保険契約者等から請求がなかったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったことをいう。以下同じ。)がなかったかどうかにつき調査結果を報告するよう求めた。この結果、自動車保険、火災保険、新種保険、傷害保険等に関し、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、株式会社損害保険ジャパン、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社、日新火災海上保険株式会社、朝日火災海上保険株式会社、セコム損害保険株式会社、明治安田損害保険株式会社、スミセイ損害保険株式会社、大同火災海上保険株式会社、ソニー損害保険株式会社、セゾン自動車火災保険株式会社、三井ダイレクト損害保険株式会社、そんぽ24損害保険株式会社、エース損害保険株式会社、アクサ損害保険株式会社、ジェイアイ傷害火災保険株式会社、アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー、エイアイユーインシュアランスカンパニー、チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー、アシキュラチオニ・ゼネラリ・エス・ピー・エイ及びザ・ニュー・インディア・アシュアランス・カンパニー・リミテッドの付随的な保険金の支払漏れ約十八万件、付随的な保険金の支払漏れの金額約八十四億円が認められ、その旨を平成十七年十一月二十五日に公表した。金融庁は、付随的な保険金の支払漏れの問題が認められた二十六社に対し、同日、保険業法第百三十二条第一項等の規定に基づき、業務改善命令を発出した。
 この二十六社は更に調査を行っていたが完了しないため、この二十六社に対し、平成十八年十一月十七日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十二月八日までに、付随的な保険金の支払漏れに係る調査が最終的に完了する時期等について報告するよう求めた。その報告によれば、平成十九年六月までには最終的な調査が完了するとのことである。また、平成十八年十一月十七日に、それまでに判明した付随的な保険金の支払漏れの件数及び金額については、平成十七年十一月二十五日に公表したものを含め、約三十二万件及び約百八十八億円である旨を公表した。
  (2) すべての損害保険会社に対し、平成十八年七月十四日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十月三十一日までに、平成十三年七月一日から平成十八年六月三十日までの間の第三分野商品に係る疾病又は介護を支払事由とする保険金のすべての不払の事案について、保険金等の不適切な不払がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。この結果、全損害保険会社四十八社のうち二十一社において保険金等の不適切な不払五千七百六十件、保険金等の不適切な不払の金額約十六億円が認められ、その旨を平成十九年三月十四日に公表した。金融庁は、第三分野商品に係る保険金等の不適切な不払が認められた二十一社のうち東京海上日動火災保険株式会社、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社、日新火災海上保険株式会社、日立キャピタル損害保険株式会社、アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー及びエイアイユーインシュアランスカンパニーに、保険業法第百三十二条第一項等の規定に基づき業務改善命令を、東京海上日動火災保険株式会社、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社及び日新火災海上保険株式会社に、同法第百三十二条第一項の規定に基づき業務停止命令を発出し、その旨を平成十九年三月十四日に公表した。

一の2及び3について

 金融庁が現時点において行っている保険会社に対する点検等の要請の概要は次のとおりである。金融庁は、火災保険を取扱う損害保険会社三十社に対し、平成十八年十二月二十日に、火災保険の募集態勢が整備されているかどうか等についての点検を要請し、平成十九年一月三十一日までに点検の対象範囲、方法、完了予定時期について報告するよう要請した。金融庁としては、各社がこの報告に基づいて募集態勢等について点検を行うとともに個々の契約内容を確認し、問題がある場合には適正化を図っていくことと承知しており、今後とも各損害保険会社において進行中の調査の進捗状況等を注視していくこととしている。
 また、一の1についてで述べたもののほか、平成十七年二月以降の保険業法第百三十二条及び第百三十三条に基づく行政処分に際して、金融庁が把握していた保険会社の付随的な保険金の支払漏れ及び保険金等の不適切な不払に関し、公表を行った事案の概要については、次のとおりである。
 (一) 生命保険会社
 明治安田生命保険相互会社の詐欺・錯誤を広く適用した保険金等の不適切な不払等につき平成十七年二月二十五日に公表した。
 (二) 損害保険会社
  (1) 株式会社損害保険ジャパンの付随的な保険金の支払漏れ二万八千六百七件、付随的な保険金の支払漏れの金額約十億五千五百十万円が認められ、その旨を平成十八年五月二十五日に公表した。
  (2) 三井住友海上火災保険株式会社の保険金等の不適切な不払九百二十七件、保険金等の不適切な不払の金額約一億六千六百万円及び付随的な保険金の支払漏れ四万四千四百六十九件、付随的な保険金の支払漏れの金額約二十六億六千五十万円が認められ、その旨を平成十八年六月二十一日に公表した。
 さらに、保険会社の保険金等の支払状況について、御指摘の「報告徴求等」により金融庁が把握した以外の内容としては、保険会社に対する立入検査等が該当すると考えられるが、公にすることにより、検査・監督業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあること等から、お答えすることは差し控えたい。


一の4について
 金融庁では、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認められるときは、保険会社に対し報告を求めることとしており、一の1についてで述べた対応を行ったところであるが、現時点においては、直ちに追加的な対応を取る必要性は認識していない。
 
  二 一の結果等を踏まえ、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の発生状況について、統計的に示すべきと考える。例えば、生命保険協会の「生命保険の動向」によれば、個人保険、個人年金保険、団体保険の保険契約件数は、平成十七年度末で一億八千九百十三万件となっているが、これらのうち、「保険金の不払」事案及び「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」事案の件数、割合がどれだけあるかを示すべきではないかと考える。

1 このような形で、生命保険、損害保険を問わず、保険契約全体に対する「保険金の不払」事案及び「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」事案の発生状況を統計的に示すことは可能であるか。可能である場合には、どのような形でいつ示すことが可能となるのか、示されたい。可能でない場合、その理由を示されたい。

2 「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の発生状況については、個別会社の実態を踏まえた傾向、例えば、「ある会社については、特定の地域、支店、部署で、一定の要因により、不適切な取扱いが頻発している」といった傾向を指摘することができるか。あるいは、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」は、恒常的、組織的な要因により、遍在しているものか。その傾向を可能な限り具体的に示されたい。
二の1について
 データが揃っていないこともあり、保険契約全体に対する御指摘の事案の発生状況を統計的に示せるか、その可否も含めて今後検討してまいりたい。

二の2について
 一の1について及び一の2についてで述べた行政処分については、いずれも、経営管理態勢、保険金等支払管理態勢等の不備を要因とするものであると認識している。
 
  三 「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」の実態解明に関するこれまでの金融庁及び保険会社各社の取組では、どのような不払の事案に不適切な取扱いがあるのか、その態様、原因を十分に解明するに至っていない。単に保険会社側の対応にとどまらず、保険契約者等からみて、保険金不払を認容する原因が何かを分析した上で、対策を講ずる必要があると考える。

1 金融庁は、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」について、「付随的な保険金の支払漏れ」、「保険金等の不適切な不払」、「保険金等の不適切な未払」の三類型に分類していると承知しているが、これ以外に「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」と判断される類型はないのか。例えば、金融庁の分類する「保険金等の不適切な不払」については、「請求を受けた保険会社が、不適切な判断により保険金等を支払っていなかったこと」とされているが、保険会社が不適切な判断を保険契約者等に提示・説明したことにより、請求が行われなかった場合など、保険契約者等の請求等の行為がない場合も、「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」と判断される場合があると考えるが、政府の見解を示されたい。

2 「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」があった場合、保険事故の発生により保険金の支払を受けることが可能であるにもかかわらず、保険金が支払われていないのであるから、保険契約者等は、支払を受けることができることを知らない、あるいは、支払を受けることができないと思ったということとなる。「保険金等の支払に関する不適切な取扱い」について、保険契約者等が不払を認容した理由・動機・原因について、どのように分析しているか。また、不適切な取扱いについて、保険契約者等の事情を踏まえた類型化は可能か。可能であれば、その類型を示されたい。

3 保険契約は、保険金支払を目的に締結される契約であることから、そもそも保険契約者が保険金の支払可能性を誤認して契約したような場合には、顧客の知識、経験、契約を締結する目的等に照らして不適当と認められる保険契約が締結されたこととなり、いわゆる適合性の原則に違反するものと考えるが、政府の見解を示されたい。
三の1について
 金融庁は、把握している保険会社の保険金等の支払に関する不適切な取扱いについて、次のように分類している。
 (一) 保険金等の不適切な不払
 (二) 保険金等の支払漏れ
 (三) がん保険等における保険金等の支払に関し、被保険者にがんの告知が行われていない等の理由から、保険会社が、保険金等の支払を留保したものについて、留保の理由が消滅した後も支払っていなかったもの。
 なお、一の2及び3についてで述べた三井住友海上火災保険株式会社に対する行政処分において、保険会社の不適切な説明により、顧客が付随的な保険金の受取を辞退し請求放棄となっている事案については、保険金等の支払漏れとして分類している。また、一の1についてで述べた損害保険会社における第三分野商品に係る保険金等の不適切な不払に係る行政処分において、顧客が保険金の請求を放棄する旨意思表示をしたとして不払としている事案のうち、その経緯等の検証ができないものについては、保険金等の不適切な不払として分類している。

三の2について
 金融庁は、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認められたときは、保険会社に報告を求めるほか、保険契約者等から相談・苦情等を通じ事実関係の把握に努め、保険契約者等の事情等を確認している場合もあり、保険会社の監督に活用しているところであるが、保険契約者等の事情等は様々なものであることから、御指摘の類型化は困難である。

三の3について
 保険の引受等に当たっては、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた説明が重要であると考えているが、お尋ねのケースが保険業法施行規則(平成八年大蔵省令第五号)第五十三条の七に違反するかについては、個々の事案ごとに判断されるべきものと考える。
 
  四 保険契約は、保険契約者等に対し、リスクに関する感性を要求する金融商品である。すなわち、保険契約が提供する保障(補償)内容と自分の期待する保障(補償)内容との一致点と相違点とを、保険契約者等が自己責任で正確に判断できなければ、本来、購入することのできない金融商品である。しかしながら、現状の保険商品は、消費者ニーズへの対応の名の下、商品設計がいたずらに複雑化されており、それが今般の保険金不払問題の構造的要因となっている。
 保険商品は、国民に対し、安全と安心を提供するものであり、そのセーフティネットに遺漏は許されない。大方の保険商品が適切に販売され、大方の国民が保険商品という安心を入手できるというだけでは足りず、その陰で安心を享受することのできない人たちに対して、目配りをすることによって、初めて成熟した国家と言える。すべての国民が、必要とする安全・安心な保険商品の提供を受けることができるよう保険業法を始めとする関連金融諸法令を抜本的に見直す必要がある。


1 そもそも保険業法第一条の目的規定は、「保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保すること」を直接の目的として定めており、結果として「保険契約者等の保護」、「国民生活の安定」が図られるに過ぎない構造となっている。これでは、保険会社の健全性が保険契約者の保護より優先されてしまい、ましてや保険に入れない人々を救うことはできない。「保険業の公共性にかんがみ」、保険業法の目的規定に「国民が簡易に利用できる保険の提供」と「福祉の増進」を明示すべきである。この点に関し、政府の見解を示されたい。

2 保険契約者等の個々のリスク感性に応じた適切な保険商品を提供するため、保険業法及び保険業法施行規則上、社内規則等の整備に関する義務にとどまっている適合性の原則について、保険契約時及び保険事故発生時に顧客の知識、経験、契約を締結する目的等を踏まえた説明義務を保険会社に課すとともに、国民、消費者一般のリスク感性を踏まえた保障(補償)内容の分かりやすい保険商品の設計・販売を進めるべきである。これらの点に関し、政府の見解を示されたい。

3 保険広告の適正化に関しては、平成十八年二月の「保険会社向けの総合的な監督指針」の改訂にもかかわらず、その後も、厚生労働省が、高額療養費制度についての正確な説明を求めるなど、誤解・不適切な印象を与える広告が氾濫し、問題は全く解消していない。そもそも、保険加入のニーズを必ずしも感じていない者に対して、その必要性をいかに認識させるかという問題は、教育機関、行政、NPO等の中立的な第三者が担うべき金融教育の分野に属する問題であって、保険会社による営利目的の広告によって、意図的にその必要性・ニーズが喚起されるようなことは、決してあってはならないことと考える。保険の必要性を国民に喚起する役割は、中立的機関による金融教育の分野にゆだね、不当に保険加入を勧誘する営利の保険広告を抜本的に規制する必要があると考えるが、この点に関する政府の見解を示されたい。併せて、保険販売チャネルとなる保険募集人、代理店、仲立人あるいは銀行等の金融機関窓口職員についても、同様の観点から、基本的な保険ニーズについて中立的な説明・勧誘が担保されるよう資格・要件の見直し、研修の強化等を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
四の1について
 保険業法第一条の目的規定は、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図ること等を目的としているため、保険会社の健全性が保険契約者の保護より優先するとの御指摘は当たらないと考えている。また、御指摘の「国民が簡易に利用できる保険商品」については、各社の経営判断によって提供されているものと承知している。

四の2について
 金融庁は、平成十八年二月二十八日に「保険会社向けの総合的な監督指針」(以下「監督指針」という。)を改正し、保険業法施行規則第五十三条の七に規定する措置として、保険契約の重要な事項について理解しやすい説明等を行うため、契約概要等を記載した書面を保険契約者等に交付するための体制を整備していること等を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化したところである。
 また、平成十九年二月二十二日に監督指針を改正し、同規則第五十三条の七に規定する措置として、顧客のニーズに関して情報を収集し、保険商品が顧客のニーズに合致することを確認する意向確認書面を作成するための体制を整備していること等を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化したところである。
 さらに、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の施行に伴い、販売・勧誘ルールとしての適合性の原則等が一部の保険商品にも適用されることから、現時点において、新たな規制を導入する必要はないと考える。

四の3について
 金融教育の中で保険の役割を国民に適切に伝えることは重要であると考えており、金融庁としても保険の種類や役割等について記載したパンフレットを作成し、配布するなど、金融教育に取り組んでいる。
 また、保険広告については、保険業法施行規則において、保険契約等に関する事項であってその判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、誤解させるおそれのあることを告げ、又は表示する行為を禁止している。
 保険募集人の教育についても、監督指針において、多様化した保険商品に関する十分な知識の付与及び適切な募集活動のための十分な教育の実施を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化しているところである。

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世界経済の中で没落を続ける日本経済と骨太方針二〇〇七素案に関する質問主意書

 
衆議院議員 滝  実
 
 世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状態にあったため、世界経済に占める日本のシェアが平成十年の十七%から平成十七年の十.三%にまで急降下し、日本経済の没落が続いていることは、政府も認めるところである。この状況で、参議院選に向けて、与党の事実上の政権公約となると言われている骨太方針二〇〇七素案が発表されたが、これに関連して質問する。

   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
 
一 政府はデフレは良くないと考えているのか、それともデフレ脱却はしなくてもよいと考えているのか。
一について
政府としては、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定。以下「進路と戦略」という。) において述べているとおり、「再びデフレに戻ることのないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させる必要がある」と考えている。
 
  二 日本の名目成長率はOECD三〇か国の中で、群を抜いて最低である。今後も最低の水準でよいと考えているのか。 二について
政府としては、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣議決定)及び進路と戦略に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。
 
  三 骨太方針素案では、二〇〇八年度予算では、歳出を最大限削減するとある。これは、当然のことながら、経済成長率を最大限下げ、デフレを最大限悪化させ、世界経済における日本のシェアを最大限減らすということを意味する。それとも、そうでないという具体的な試算があるのか。 三について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。今後の経済財政運営の中期的な方針を示した進路と戦略の対象期間中の経済の展望については、衆議院議員滝実君提出平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する第二回質問に対する答弁書(平成十九年六月一日内閣衆質一六六第二二五号)においてお答えしたとおりである。
 
  四 政府は二〇〇六年度と二〇〇七年度に定率減税廃止という形で三.三兆円の増税を行った。内閣府の試算では、これが名目GDPを〇.八%押し下げ、債務のGDP比を上げると示されている。OECD三〇か国の中で、群を抜いて最低である日本の名目成長率を更に下げ、財政を悪化させる政策をなぜ行うのか。なお、所得税から住民税への三兆円の税源移譲により所得税は二〇〇六年に減税しているものの、住民税は二〇〇七年で増税になる。住民税の二〇〇七年の増税はGDPにどのように影響すると計算されているのか。 四について
定率減税は、平成十一年に、名目成長率がマイナスとなるなど極めて厳しい経済情勢の中で、景気を下支えするために導入された暫定的な負担軽減措置であり、こうした導入の経緯や、その後の経済状況の改善を踏まえ、縮減・廃止したものである。今回の所得税から個人住民税への税源移譲は、地方分権の一層の推進を図るため、国・地方の三位一体改革の一環として行うものである。これにより、多くの納税義務者は、平成十九年一月から所得税の額が減少し、同年六月から個人住民税所得割の額が増加することとなるが、年間の所得等が一定であるとした場合、税源移譲の前後で所得税の額と個人住民税所得割の額との合計額が基本的に変わらないよう制度設計しているところであり、今回の税源移譲による影響は、家計を含む経済に対して中立であると考えている。
 
  五 「政府戦略大綱二〇〇七年度原案」の実現に向け、政府は成長施策に五〇〇〇億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入ったとの報道があった。GDPの僅か〇.一%の予算で、一体どの程度の成長率押し上げ効果を期待できるのかの試算はできているのか。この程度の予算では、増税、歳出削減、政策金利引き上げによるGDP押し下げのほうがはるかに大きいと思われる。歴代の政権では、経済対策に対しては、ことごとくそのGDP押し上げ効果が計算されて、国民に示されている。これは国民の税金を使う者が行わなければならない最低限の義務だと考えるがどうか。 五について
御指摘の「「政府戦略大綱二@O七年度原案」の実現に向け、政府は成長施策に五〇O@億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入ったとの報道」が何を指すのかは必ずしも明らかではないが、政府として、「経済成長戦略大綱」(平成十八年七月六日財政・経済一体改革会議決定) の改定に関して、御指摘のように「五〇〇〇億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入った」という事実はない。

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【ETCシステムにおける新たな利用者負担の解消とORSEの廃止等に関する質問主意書】
  参議院議員 荒井広幸

 私は新党日本の議員であるが、参議院で一人であるので無所属扱いとなっている。このため、国政一般について幅広く質疑を行うことができる予算委員会、決算委員会には割当がないことから、質問主意書という手法で政府の姿勢を問うものである。
 近年、有料道路自動料金収受システム、すなわちエレクトロニック・トゥール・コレクション・システム(以下「ETCシステム」という。)の利用・普及が目覚ましく拡大している。日本道路公団を始めとする道路関係四公団(以下「公団」という。)の民営化関係法案が成立した平成十六年頃は、ETCシステムの利用率は二十パーセント程度であったが今や三倍以上の六十七・七パーセントとなっており、ETC車載機のセットアップ台数も四百万台程度であったものが、四倍以上の千七百万台となっている。この急激なETCシステムの利用・普及拡大の背景には、公団の民営化の際に、世界一高い高速道路の通行料金の引下げが焦点となり、ETCシステムの利用に限って割引制度が導入された経緯がある。ただし、当初、全国平均で約一割とされていたはずの料金引下げが、なぜETCシステムの利用にのみ限られたのか、私は大いに疑問を持っている。それは、ETCシステムの利用については、高価なETC車載器、クレジットカードの発行に依存した決済システムの構築、財団法人道路システム高度化推進機構(以下「ORSE」という。)という各種手数料徴収を目的とした公益法人の存在など、その必要性を疑う不透明な部分が存在しているからである。それは、既得権益打破を高らかにうたった小泉改革の民営化の下、その陰で産官による新たな既得権益とも呼べる国民負担を強いるシステムが作り上げられてきた証左ではないかと考えている。この疑問を明らかにして、ETCの利用にまつわる不透明な部分を正し、日本の高速道路の料金収受体制を真に透明性のある公正・公平なものにしたいとの観点から、以下質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 当初、公団民営化の成果として全国平均で約一割としていたはずの料金引下げが、ETCシステムの利用のみに限られた経緯と理由について示されたい。 一について
 高速自動車国道の料金引下げの対象については、「道路関係四公団民営化の基本的枠組みについて」(平成十五年十二月二十二日政府・与党申し合わせ)に基づき、国土交通省において、学識経験者や国民一般からの意見を踏まえて検討した結果、ETCシステム(有料道路自動料金収受システムを使用する料金徴収事務の取扱いに関する省令(平成十一年建設省令第三十八号。以下「ETC省令」という。)第一条に規定する「ETCシステム」をいう。以下同じ。)の活用により時間帯割引等の多様な料金割引が可能となることや料金所での渋滞減少等の効果があること等から、これをETC通行車(道路整備特別措置法施行規則(昭和三十一年建設省令第十八号。以下「特措法施行規則」という。)第十三条第二項第三号イに規定する「ETC通行車」をいう。以下同じ。)とすることが妥当であるとの結論を得た。
 その結論を踏まえ日本道路公団は、国土交通大臣に対し料金の変更の認可の申請を行い、平成十六年九月二十四日に国土交通大臣が日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律(平成十六年法律第百一号)による改正前の道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第二条の四の規定による認可を行ったものである。
 
  二 ETC車載器の現在の平均的な単価を明らかにされたい。また、ETC車載器のセットアップ台数は、累積で千七百万台であるが、ETC車載器にかかわったメーカーの売上額の累積額を明らかにされたい。
二、三及び四について
 我が国のETCの車載器の平均的な販売価格は、財団法人道路システム高度化推進機構(以下「ORSE」という。)の調査によれば、平成十九年三月末時点で、約一万三千円であると承知している。お尋ねの「ETC車載器にかかわったメーカーの売上額の累積額」については、承知していない。
 諸外国における道路の自動料金収受システムの概要、車載器一台当たりの利用者の購入額及び通行料金の割引制度については、ORSEの調査によれば、例えばシンガポールにおいては、一定の区域内に進入する自動車について車載器の取付けが義務化され、自動車が当該区域内に進入する際に車載器と路側設備との無線通信により課金しており、車載器一台当たりの価格は、平成十九年一月時点で、約百五十シンガポールドル(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円シンガポールドル平均レートを使用して円に換算すると、約一万二千円である。)であり、通行料金は一定の区域内の自動車の平均走行速度が高い場合には、料金が引き下げられ無料となる場合もあると承知している。
 イタリアの高速道路を管理する会社であるアウトストラーデの管理している道路においては、料金所において車載器と路側設備との無線通信により距離に応じた料金を課金しており、車載器一台当たりの価格は、平成十九年一月時点では、約五十ユーロ(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円ユーロ平均レートを使用して円に換算すると、約七千八百円である。)であり、料金割引は実施していないと承知している。
 カナダのトロントにおいては、有料道路において道路管理者が道路利用者に貸与する車載器と路側設備との無線通信により距離に応じた料金を課金しており、車載器一台当たりの一年間の貸与料は、平成十九年一月時点で、約二十カナダドル(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円カナダドル平均レートを使用して円に換算すると、約二千円である。)であると承知している。また、夜間割引、週末割引等の約五パーセントの料金割引を実施しており、これらは車載器を付けていない自動車についても適用されるが、当該自動車については、一回の走行当たり、小型車で三・五カナダドル、大型車で五十カナダドルの別途料金が加算されると承知している。

 
  三 諸外国における有料道路の通行料金の電子決済の概要を示されたい。また、電子決済に使用する車載器一台当たりの利用者の購入額について日本との比較を示されたい。特に、シンガポールのように日本のETCシステムと同様の制度を採用する国での車載器一台当たりの額を示されたい。    
  四 諸外国において、有料道路の通行料金の割引制度の概要を示されたい。特に、電子決済を採用している場合に、電子決済以外の通行料金に対しても割引制度を導入している事例があれば示されたい。
   
  五 平成十七年十月に公団が完全民営化されたが、その直後に、民営化された各高速道路株式会社はクレジットカードの発行を前提としないETCパーソナルカードを発行している。そもそも、民営化の成果とされる高速道路の料金引下げは、公団の民営化という改革の名の下に行われた「国策」であり、あまねく全国民に行き渡るべきものである。また、道路の通行から得られるサービスの質は、道路の公共性を考えると、国民のだれしもがひとしく受けることができねばならないと考える。
 しかし、ETCシステムの利用の前提として、クレジットカードの発行が必要となるならば、その発行自体が信販会社の審査にゆだねられ、単にETCシステムの利用負担を支払うかどうかだけの問題ではなく、民間会社が設けた非公開の基準により、民営化の成果による通行料金の割引やETCの利用によるサービスを享受できる国民と、そうでない国民を選別するものにつながるものと思われる。なぜ、政府は公団時代からETCパーソナルカードよりも先に、クレジットカード方式によるETCシステムを選択・導入・推進してきたのか、その理由を示されたい。
五について
 ETCシステムの導入に当たって、クレジットカードを用いて料金を徴収する方式は、御指摘のETCパーソナルカードを用いる方式のようにあらかじめ利用者から保証額を利用実績に応じて徴収する方式と比べて、利用者の利便性や導入等に要する経費等の点で合理的であると考えられていたため、ETCパーソナルカードを用いる方式よりもクレジットカードを用いる方式が先行して導入されたものである。

 
  六 ETCを使って高速道路を通行すると、クレジットカードの金融機関の登録口座から利用金額が差し引かれるが、口座の引落し手数料等、金融機関がETCの利用・普及の拡大で得ている収入の年間額を示されたい。また、クレジットカードの年会費など、信販会社等カードの発行事業体が得る収入も示されたい。さらに、手数料等の負担は、すべてカード利用者が負うものであるのか明らかにするとともに、ETCパーソナルカードは会員費で年間千二百円掛かるというが、クレジットカードと比較して利用者の負担が少なくどちらが有利になるか示されたい。 六について
 お尋ねの「金融機関がETCの利用・普及の拡大で得ている収入の年間額」及び「信販会社等カード発行事業体が得る収入」については、承知していない。
 クレジットカードを用いて有料道路の料金を支払う場合、クレジットカードの決済口座のある金融機関及びクレジットカードの発行事業主体は、クレジットカードの利用者に対し直接手数料の負担を求めることは、通常ないものと承知している。また、クレジットカードの年会費等については、クレジットカードの発行事業主体によって異なるものであるため、クレジットカードの利用者が負担するかどうかについては、一概に言えないものと考えている。そのため、クレジットカードと、年会費が千二百円である御指摘のETCパーソナルカードとで、どちらが利用者にとっての負担が少なく有利となるかについては、一概に言えないものと考えている。
 
  七 ETC利用の手数料については、電子決済の手数料のほかにも、セキュリティ面の手数料が掛かる。その手数料を徴収する団体として、ORSEという公益法人が設立されている。平成十一年八月に定められた「有料道路自動料金収受システムを使用する料金徴収事務の取扱いに関する省令」で、ORSEの業務内容として、@情報安全確保規格の提供を代行すること、A対価を得て識別処理情報の付与を行うことが定められている。既に、各高速道路株式会社がETCパーソナルカードを発行しており、ETCシステムの開発、情報管理等については、以後、民営化された各高速道路株式会社で行うことも可能であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、JRのスイカや私鉄・バス事業者が採用するパスモは、民間会社が運営している。仮に、ORSEを存続すると言うのであれば、民営化された各高速道路株式会社が、ORSEの業務を行うことが不可能である理由を示されたい。 七及び二十八について
 ORSEが行う情報安全確保規格(ETC省令第四条第一項第一号に規定する「情報安全確保規格」をいう。以下同じ。)の提供の代行及び識別処理情報(同項第二号に規定する「識別処理情報」をいう。以下同じ。)の付与の業務については、これらを確実かつ効率的に実施するとともに複数の有料道路の利用者の利便に資するよう一元的な実施を確保する必要があり、これを各高速道路株式会社がそれぞれ行うこととすると、一元的な実施を図ることが困難となり、結果として複数の有料道路の利用者の利便を害する結果にもつながるため不適切であると考えている。
 したがって、今後もORSEにおいて引き続き当該業務を行うことが適切であると考える。
 
  八 ORSEに事業を行わせることを明記した省令を制定した理由をその経緯とともに明らかにされたい。
八について
 御指摘の省令については、平成十一年八月二日に制定し、ETCシステムに係る情報安全確保規格の提供及び識別処理情報の付与の業務について、確実性及び効率性並びに複数の有料道路の利用者の利便に資するよう一元的な実施を確保する観点から、同令第四条第一項第三号の規定により、情報の安全確保の確実かつ効率的な実施を目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の財団法人に、情報安全確保規格の提供を代行すること及び識別処理情報の付与の業務を一元的に行わせることとしているものである。
 ORSEについては、情報安全確保規格の提供の代行及び識別処理情報の付与の業務を専門的及び一元的に実施すること等を目的として設立された財団法人であって、その目的を適正に遂行する能力を有していると考えていることから、ORSEが同令に規定する財団法人に該当するものと考えている。
 
  九 ORSEは高度なセキュリティ対策が必要だとしているが、ORSEが提供する情報安全確保規格は、いわゆるセキュリティの評価として国際標準規格(ISO一五四〇八)では、どのような評価を獲得しているか示されたい。また、識別処理情報についても同様に示されたい。 九について
 ORSEは、情報安全確保規格の提供の代行及び識別処理情報を付与する業務を行う必要があり、情報の安全確保の観点から、国際標準化機構(ISO/IEC)の定める規格二七〇〇一に基づく情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度の認証を取得している。
 御指摘の「国際標準規格(ISO一五四〇八)」は情報技術に関連した製品及びシステムが情報の安全確保の観点から適切に設計され、それが実装されたかを評価するためのものであり、ETC車載器やETCカード等を製品化するに当たっての評価基準であって、ORSEはそれらの製品化は行っていないため本規格に基づく評価及び認証の取得を行っていない。

 
  十 電子決済の技術は、日進月歩で発展してきている。スイカやパスモは、現金をチャージさえすれば使用可能で、利用者側の負担もデポジット料金五百円を使用開始の際、一回支払うのみで、使用しなくなったときは事業者にカードを返せばデポジット料金は戻ってくるシステムになっている。こうしたものを目の当たりにすると、高価な車載器を買わされ、電子決済の度に別に料金を金融機関から差し引かれ、情報安全管理と言ってはORSEから手数料を差し引かれる現在の有料道路の決済システムは、利用者に過度の負担を強いているものと思わざるを得ない。ETCシステムの利用を、現金をチャージするだけの無記名カードに切り替えれば、公団時代のプリペイドカードのように個人情報や鍵情報など識別情報の管理の必要性から、公益法人までも設立する必要はないと考えるが、政府の見解を示されたい。 十について
 ETCシステムにおいては、自動車の種類に応じて異なる料金を確実に徴収する必要があることから、仮に御指摘の「無記名カード」を用いて料金を徴収する方式にしたとしても、自動車の情報について不正記録防止等の措置を講じた上で、識別処理情報として車載器ごとに付与する必要がある。
 識別処理情報の付与については、複数の有料道路の利用者の利便に資するとともに、情報の安全確保や関連する民間事業者に対する中立性及び公正性の確保等の観点から、公益を目的として設立された財団法人に一元的にこれを行わせることが必要であると考えている。
 
  十一 平成十七年度の事業報告書を見ると、平成十一年度からの鍵情報発行数は千四百七十万件とのことである。その鍵の種類については、車SAM鍵情報やETCカード用鍵情報があるとされるが、それぞれの一件当たりの発行手数料の額について、鍵情報の種類ごとの収入額、さらに全体額を年度ごとに示されたい。
十一について
 ORSEから聞いたところ、車SAM鍵情報(車載器に付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)については、その使用料は、平成十一年度から平成十六年度までは一件当たり百五円であり、平成十七年度は九十四・五円であるとのことである。年度別の使用料の収入実績は、平成十一年度が百五十二万八千円、平成十二年度が千四百十二万八千円、平成十三年度が五千六百三十七万三千円、平成十四年度が九千二十七万九千円、平成十五年度が二億八百四十七万八千円、平成十六年度が五億四千九百八十五万三千円、平成十七年度が四億四千百七十三万四千円であるとのことである。
 また、ETCカード用鍵情報(ETCカードに付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)については、その使用料は、平成十一年度から平成十六年度までは一件当たり百五円であり、平成十七年度は九十四・五円であるとのことである。年度別の使用料の収入実績は、平成十一年度が七百万六千円、平成十二年度が六千七百十五万六千円、平成十三年度が一億四千二百二十七万二千円、平成十四年度が一億四千五百二十万円、平成十五年度が二億七千五百六万円、平成十六年度が五億七千三百九十四万円、平成十七年度が八億三千六百十五万八千円であるとのことである。
 車SAM鍵情報の使用料とETCカード用鍵情報の使用料の収入実績の合計額は、平成十一年度が八百五十三万四千円、平成十二年度が八千百二十八万四千円、平成十三年度が一億九千八百六十四万五千円、平成十四年度が二億三千五百四十七万九千円、平成十五年度が四億八千三百五十三万八千円、平成十六年度が十一億二千三百七十九万三千円、平成十七年度が十二億七千七百八十九万二千円であるとのことである。
 
  十二 ORSEが、何に基づいて対価の額を決定しているのか示されたい。事業報告書を見ると、手数料収入は予算段階よりも決算段階で多くなっているケースが見受けられる。仮に、実費を勘案して決定しているならば、予想を上回るETCシステムの利用・普及が促進された場合、結果として手数料を高く取り過ぎる結果になると思うが、政府の見解を示されたい。
十二について
 識別処理情報の価格は、その管理及び提供に要する費用を基本として、ETCシステムの普及促進を図る観点も踏まえ、ORSEにおいて決定しているものと承知している。
 
  十三 セットアップ情報の手数料について、現在は「キャンペーン」と称して徴収していないようであるが、これまでの年度ごとの徴収の経緯と、徴収しないことに至った理由を示されたい。
十三について
 ORSEにおいては、セットアップ情報の手数料については一台当たり五百二十五円を徴収していたが、ETCシステムの普及促進のため、平成十六年十月から百五円、同年十一月からは五百二十五円の割引を実施していると承知している。
 
  十四 事業報告書では、有料道路事業者等に対し路測機用の鍵を四百八十三件発行したとあるが、この路測機用の鍵の発行手数料を示されたい。
十四について
 ORSEでは、平成十七年度において有料道路事業者より路側鍵情報(路側設備に付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)の使用料として合計で一億八千二百三十七万六千円を徴収しているものと承知している。
 
  十五 スマートインターチェンジの設置について、国土交通省に鍵情報を発行したとしているが、一件当たり得た対価を示されたい。また、平成十六年からの社会実験でORSEに支出されている国費の内訳を示されたい。 十五について
 スマートインターチェンジ(地方公共団体が主体となって発意し、高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第十一条の二第一項の規定に基づき連結許可を受けた同法第十一条第一号の施設で、特措法施行規則第十三条第二項第三号のETC専用施設が設置され、ETC通行車のみが通行可能なインターチェンジ。以下「スマートIC」という。)の社会実験のためにORSEに対し支出した国費は、検討業務の委託費として、平成十六年度については五千四百七十二万六千円、平成十七年度については六千六百四万五千円である。
 スマートICの社会実験を行うに当たり、路側鍵情報の使用料として国土交通省からORSEに対し、国費は支出していない。
 
  十六 そのほかにORSEが徴収している手数料があれば、一件当たりの額、件数、これまでの収入を示されたい。 十六について
 ORSEが、車SAM鍵情報の使用料、ETCカード用鍵情報の使用料、セットアップ情報の手数料及び路側鍵情報の使用料の他に徴収している手数料としては、相互接続性試験料、確認番号付与料及び型式登録料があると聞いている。
 相互接続性試験料については、平成十七年度までで百三十三回徴収しており、一件当たり一日につき十五万七千五百円、収入総額は二千九十四万七千五百円であると聞いている。
 確認番号付与料については、平成十七年度までで百機種分徴収しており、一機種当たり一万五百円、収入総額は百五万円であると聞いている。
 型式登録料については、平成十七年度までで百七十九回徴収しており、一件当たり三万千五百円、収入総額は五百六十三万八千五百円であると聞いている。
 
  十七 ORSEは、セットアップ事業者と契約を結ぶ際に、その登録店数に応じて保証金を取っているが、その内容や使途を示すとともに、保証金の根拠についても明らかにされたい。また、セットアップ事業者に対し、契約更新料、年間契約費など別途徴収しているものがあれば示されたい。さらに、この保証金収入は収支計算書にどのように反映されているか示されたい。 十七について
 御指摘の保証金は、ORSEがセットアップ事業者との間の契約に基づき、貸与した機器が破損した場合の損害金等の債務の担保としてORSEが預るものであり、セットアップ事業者の店舗の数に応じて金額を定めているものと承知している。
 保証金収入については、収支計算書の「受入保証金収入」として計上し、ORSEがセットアップ事業者に事業年度内に返却したもの以外については「受入保証金引当預金支出」として計上している。
 このほか、セットアップ事業者に対し、セットアップ事業を実施するに当たって必要な業務用書類一式やセットアップの業務を実施する店舗の登録に係る手続費用、ORSEと通信回線で接続を希望する場合の貸与機器使用料等の負担を求めていると聞いている。
 
  十八 ORSEの平成十七年度決算書を見ると、収入の予算額と決算額の増減が激しい。@鍵使用料収入の予算額は約八億二千万円であるが、決算額は約十四億七千万円と約六億五千万円増えている。Aセットアップ収入の予算額は約十億二千万円であるが、決算額は約四億五千万円と約五億七千万円減っている。B受託収入の予算額は約五億八千万円であったが、決算額は約十三億九千万円と約八億一千万円も増えている。CETCリース等支援事業収入の予算額は四十七億五千万円であったが、決算額は約四十二億二千万円と約五億二千万円減っている。このように収入項目ごとに予算額と決算額が半分以上も上下するような年間の財務見通しを立てる団体が、健全な財政運営を行い得る団体であるのか、政府の見解を示されたい。 十八について
 平成十七年度については、ETCシステムの各種普及促進策の実施等により、ETCシステムが急速に普及したこと等により、個々の予算科目について予算と決算との間に乖離が生じたものであると承知しており、当該年度のORSEの全体の収支をみれば、健全な財政運営を行っていると考えている。
 
  十九 ORSEの調査研究事業の内容について発注者と発注内容の内訳を示されたい。特に、ETCの社会実験関係が多いのではないかと推測するが、仮に発注者が国である場合、競争入札によるものか、随意契約によるものか、その内訳とともに示されたい。 十九について
 国土交通省、高速道路株式会社、コンサルタント、車載器メーカー等が、ETCシステムの普及促進やシステムの高度化、高速道路料金割引の効果の調査、スマートTCの社会実験に係る調査、セットアップデータの取りまとめの業務等をORSEに発注しているものと承知している。国土交通省が平成十八年度にORSEに発注した業務としては、ETCシステムの高度化業務及びセットアップデータの取りまとめ業務がそれぞれ一件あり、いずれも随意契約であった。
 
  二十 ORSEの徴収する各種手数料については、事業計画書、事業報告書には掲載されていない。対価を取ると省令で定めた公益事業において、その対価は情報開示資料として詳細に公表すべきではないかと考えるが、公表に至っていない理由を示されたい。 二十について
 ORSEについては、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成八年九月二十日閣議決定。以下「指導監督基準」という。)及び「インターネットによる公益法人のディスクロージャーについて」(平成十三年八月二十八日公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申し合わせ)に基づき、適切に情報開示をしているところであるが、個別の手数料については、これらにおいて情報公開の対象になっていないため公表していないと承知している。
 
  二十一 諸外国において、ORSEのような公益法人を設立し、ETCシステムのような自動料金収受システムの利用にかかわる鍵情報、車載器のセットアップ情報、路測機用の鍵等について、対価を徴収している事例があれば示されたい。また、諸外国においてはどのような事業体が利用者に識別処理情報等を付与しているのか示されたい。
二十一について
 諸外国において、識別処理情報を付与している事業体の事例については、把握していない。
 
  二十二 ORSEの総資産ついては平成十五年度末には四十五億円であったものが、平成十七年度末には七十一億円と急激に拡大している。剰余金に当たる正味財産も二十五億円から三十三億円と確実に増えている。既にこの法人の事業は公益事業の枠を超えて、営利事業と性質を異にしないものに成り変っていると考えるが、政府の見解を示されたい。 二十二及び二十三について
 ORSEは、寄附行為の定めるところにより、ETCシステムに関する情報安全確保規格に関する業務、ETCシステムに関する識別処理情報の付与に関する業務並びにETCシステムの技術の高度化に関する調査研究及び開発に関する業務等を適切に行っており、資産額や正味財産の増加はETCシステムの普及に伴う事業規模拡大とそれに必要な投資等によるものであり妥当なものであると考えている。

 
  二十三 このように築かれたORSEの財産は、利用者の不要な負担の上に築かれたものであり、利用者還元すべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。    
  二十四 ORSEは公益法人であるにもかかわらず、その役員には、直接利害関係の係る民間企業出身者(OB)及び在職中の者がいるが、その理由を示されたい。 二十四及び二十五について
 ORSEの役員の選任については、寄附行為第十七条第一項等の規定により、評議員会において適切に行われているものと承知しており、また、国土交通省としても指導監督基準に基づき適正に役員の選任が行われるよう指導監督を行っているところである。
 また、各省庁出身者の役員の人数は、平成十一年度から平成十八年度までについては、ほぼ同数で推移している。
 ORSEの役員給与規程については、役員の役職ごとに給与の額が定まっていることから、指導監督基準に基づき公益法人が一般の閲覧に供することとされている役員名簿と照合することにより、その給与を得る個人を識別し得ることとなるが、もとより公益法人の個人別の役員報酬額は個人に関する情報であるため、答弁は差し控えたい。
 
  二十五 ORSEの十七名の役員の内訳を見ると、常勤役員五名のうち公務員出身者は三名(国土交通省出身二名、警察庁出身一名)、非常勤役員十二名のうち公務員出身者は三名(経済産業省(旧通商産業省含む)出身二名、国土交通省出身一名)の合計六名である。これらの者の役員報酬規定について示されたい。また、各省庁からの役員採用の人数は実績として固定化されたものとなっているか明らかにされたい。    
  二十六 ORSEの非常勤役員に、財団法人道路新産業開発機構の役員がいる。同財団は、ORSEの設立支援をした団体である。同財団の役員名簿を見ると、三名の常勤役員は全員が国土交通省(旧建設省)出身で占められており、非常勤役員も含めた二十名の役員のうち半数が国土交通省(旧建設省)出身となっている。また、同財団の賛助会員を見ると、金融、マスコミ、電気産業、自動車産業、建設産業、電気・ガスなど大企業の名が並んでいるが、会員費を徴収しており、その収入だけで二億円以上に上る。
 賛助会員の特典の一つに「国土交通省道路事業予算説明会」とあり、その内容は「道路関係予算概算要求額の決定後、賛助会員を対象に、国土交通省担当者による予算説明会を実施(毎年九月下旬開催)。道路関係予算の政府案決定後、予算概要を提供。」とある。これは、特典という会費支払のインセンティブを形成する公益法人の広告まがいの行為に、政府が積極的に関与していることを示すものではないかと考える。こうした事務費用の負担者及び負担額を明らかにするとともに、どのような根拠で行われているのか、政府の見解を示されたい。
二十六について
 財団法人道路新産業開発機構が主催する「国土交通省道路事業予算説明会」は、同法人の寄附行為第四条第五号の事業の一環として行っており、その事務費用については同法人が負担しているところであり、平成十八年度の実績としては約三十二万円であると承知している。
 同説明会において国土交通省の担当者が説明を行ったことについては、同法人からの依頼に基づき、道路に関する事業や施策についての広報の一環として実施したものである。
 
  二十七 公益法人改革において、平成十八年にいわゆる「公益法人改革三法案」が成立し、平成二十年中に施行となるが、同法において、公益法人の公益性の判断を統一的かつ明確な基準の下、民間の有識者の意見に基づき行政庁が認定するとある。ORSEや財団法人道路新産業開発機構のように、そもそも有力OBが天下りをしていること自体が認定の判断を左右することはないのか、政府の見解を示されたい。また、仮にそうした団体が一般財団法人に移行するとしても、受託事業等をこれまでどおり発注し、天下りを続ければ、不透明な関係は続くのではないか。そうした部分を断ち切らずに改革と呼べるのか、政府の見解を示されたい。 二十七について
 公益法人制度改革の趣旨は、従来の民法に基づく主務官庁制による包括的な指導監督を廃止し、国にあっては内閣総理大臣が法人の公益性を統一的に認定することとし、また、当該認定は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第五条各号において定められた明確な基準に従い、有識者からなる合議制の機関の意見に基づいてなされることとしたものである。このように主務官庁制を廃止した改革の趣旨から、法人が各府省から人員を受け入れていることで、当該法人に対する公益認定の判断が左右されることはない。
 政府調達に関しては、昨年二月に「公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議」が設置され、公益法人等との随意契約についても、各府省において一般競争入札等の方式に改めていくなどの見直しを進めているところである。
 また、公益法人への国家公務員の再就職に関しては、第百六十六回国会に提出した「国家公務員法等の一部を改正する法律案」においては、各府省等職員が職員又は職員であった者について、営利企業及び非営利法人に対し再就職のあっせんを行うことを禁止し、官民人材交流センター(以下「センター」という。)に一元化することとしている。センターにおいては、@各府省等の人事の一環としての再就職あっせんから、センターによる再就職支援に重点を移していく、A各府省等の人事当局と企業等の直接交渉は禁止し、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととする、等を原則としている。併せて、再就職後の働きかけに刑事罰を課す厳格な行為規制と外部監視機関(再就職等監視委員会)による厳格な監視体制をとることとしている。
 これらの措置により、国家公務員の再就職及び国と公益法人の関係の透明性が確保されるものと考えている。

 
  二十八 これまで見てきたように、ETCシステムの利用・普及の拡大の陰で、多くの既得権益が形成されてきており、その既得権益を維持するための様々な手数料とそのための理由を意図的に作り上げ、ETC利用者の負担で支えている構造となっていると私は思う。割引を行う陰で新たな手数料を払い、そうした機会費用を含めると今までどおり世界一高い料金を払い続けるという「道路関係四公団の民営化」の真の姿が見て取れると思われ、高速道路の料金徴収期間が四十年以上も続くこととなる。既にETCパーソナルカードも導入されており、民営化による企業経営の自由度を増すためにも、各高速道路株式会社にORSEの業務を即時に移管すべきではないか、そして、財団法人道路新産業開発機構という天下り公益法人の支援により設立され、不要な手数料の温床となっている、正に「天下りの、天下りによる、天下りのための」機関である公益法人ORSEを即刻廃止すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。    
  二十九 今後の行政改革、特に公益法人改革においては、こうした考えに基づいて公的な観点から対価を徴収するものについては、真に公平・公正な負担関係を構築できるよう、ETCシステムで指摘したように利用者である国民の負担による収入を目当てとした既得権益構造が生じないよう、その制度の在り方に常に注意を払い、負担額、支払方法及びその根拠について、常に明示する体制を構築すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
二十九について
 公益法人に対しては、指導監督基準において、対価を伴う公益事業については、対価の引下げ等により収入、支出の均衡を図り、当該法人の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること等とするとともに、業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、原則として、一般の閲覧に供することとしている。御指摘のORSEについても、所管の国土交通省において、指導監督基準に基づいて適切な指導監督に努めているところである。
 今後とも、公益法人の適正な運営の確保のため、適切に情報開示が行われるよう努めてまいりたい。


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【国有林資料の保存に関する質問主意書】

 衆議院議員 滝  実 

 私は新党日本の議員であるが、衆議院で一人であるので無所属扱いとなっている。このため、予算委員会、決算行政監視委員会に議席を占めることができず、たった一つの常任委員会に所属するだけである。よって、質問主意書の形式で政府の姿勢を問うものである。
森林国日本は、国土面積の三分の二を森林が占め、そのうち三〇%、すなわち国土の二〇%が国有林である。したがって林業不況のなかで国有林の管理をどうしていくのかは日本の大問題である。このため林野庁も国有林の運営管理の改革を進めてきたが、経済効率至上主義の改革を進めたことにより、林野庁の組織を統合縮小し、その結果、出先機関に保管されてきた国有林に関する歴史的資料が散逸する危機にあると言われている。
国有林は、旧藩時代の林野を編入したもの、地元民の入会地を編入したもの、地租創設に伴い編入したものなどさまざまな経緯で編入してきたので、林野庁は森林に関するもの以外にもさまざまな資料を引き継いでいる。そこで資料の保存と公開に関して質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 旧営林局・営林署に保管されている国有林資料については研究機関により断片的に調査利用がされているが、国が網羅的に保存のための調査をすべきではないか。

二 旧営林局・営林署に保管されている資料は林野に関するものだけでなく、多方面に及ぶものがあると言われている。したがって、国内の大学・研究機関に呼びかけて公募による調査団を組織して行う必要があるのではないか。

三 資料のなかには当然、土地の境界に関するものがあるので、この扱いかたについて調査する必要があるのではないか。

一及び三について
 森林管理局、森林管理署等において保管している資料については、その現状の把握を行いつつ、引き続き適切な保存を図ってまいりたい。具体的には、国有林野の境界に関する資料等の国有林野事業にとって必要のある資料については、森林管理局、森林管理署等において、行政文書として引き続き適切な保管を行うとともに、その他の資料についても、独立行政法人国立公文書館への移管を含め適切に保存してまいる考えである。
二について
 森林管理局、森林管理署等において保管している資料について、その現状を把握するに当たっては、必要に応じて専門家の協力を求めつつ、進めていくこととしている。
 なお、森林管理局、森林管理署等において保管している資料については、従来から、研究機関等による調査、閲覧等に供しているところである。

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【地球温暖化問題等に関する質問主意書】
 参議院議員 荒井広幸

  地球温暖化について、本年二月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第一作業部会評価報告書は、温暖化が間違いなく起こっていることを明らかにするとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因であるとほぼ断定している。また、二十一世紀末には、平均気温が最大で六・四度C上昇し、台風やハリケーンなどの強大化や海水面の上昇、集中豪雨、熱波の増加などを予測している。このように、地球温暖化は、今や人の健康、食糧、水資源、居住地、生態系など、あらゆる分野に関する脅威であり、「気候安全保障」の問題だけでなく、「人間の安全保障」そのものであるとして対処されるべき緊喫の課題である。
 地球温暖化への取組は国際社会共通の重要課題であり、来年の二〇〇八年は、京都議定書の第一約束期間が始まる年であるとともに、日本で開催されるG8サミットにおいて、米国、中国、インドを含む主な国々が参加している気候変動対話(いわゆるG20対話)の成果が報告されることになっている。したがって、本年は、これらの準備を行う極めて重要な年である。このため、政府は、国内外挙げて取り組むべき環境政策の方向を明示し、今後の世界の枠組みづくりへ我が国として貢献する上での大きな指針となる「二十一世紀環境立国戦略」を六月までに策定することなどを推進している。
 こうした状況を踏まえ、これまでの政府にない環境政策への安倍内閣総理大臣の姿勢を評価しつつも、以下提案を含めた質問をする。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 政府は、地球温暖化問題は、「人間の安全保障」であり、人類の生存基盤そのものに係る基本的重要課題との切実な認識を持っているか明らかにされたい。 一について
 政府としては、平成十七年四月二十八日に閣議決定した「京都議定書目標達成計画」にあるとおり、地球温暖化問題は自然の生態系及び人類に深刻な影響を及ぼすものであり、人類の生存基盤にかかわる最も重要な問題であると認識している。
 
  二 京都議定書における温室効果ガス排出の削減義務がない途上国、特に成長著しいアジア諸国では、エネルギー効率の悪さが温暖化の元凶である二酸化炭素の急増に拍車をかけており、その対策として、世界一とされる我が国の省エネ技術への期待が大きい。こうした観点を踏まえ、地球温暖化問題への戦略の一つとして、地球温暖化対策関連ODAの充実強化が是非必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。 二及び三について
 政府としては、地球温暖化問題の重要性にかんがみ、再生可能エネルギー、省エネルギーの普及等による温室効果ガスの抑制・削減や気候変動による悪影響への適応等の開発途上国における地球温暖化対策を、我が国の有する優れた技術や知見を活用しつつ、政府開発援助を通じて積極的に支援していく所存である。
 
  三 地球温暖化問題を始めとする地球規模問題への取組は、「政府開発援助に関する中期政策」の中の四つの重点課題として位置付けられてはいるが、この際、京都議定書の約束期間である二〇〇八年から二〇一二年の五年間を集中期間と位置付け、ODAを地球温暖化対策に傾斜配分すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。    
  四 世界の中の日本の役割の量と質に応じて、現在の途上国の在外大使館の充実強化が必要である。そこで、現在の在外大使館の各国別員数と派遣(出向)員の省庁別内訳を示されたい。また、世界に対する日本の役割、特に地球温暖化対策を考慮しても、在外大使館における環境省等からの派遣員増やその構成を見直す必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。 四について
 各府省庁から我が国の在外公館に派遣されるいわゆるアタッシェについては、基本的に各府省庁の要望を尊重しつつ、外務省において、その必要性、派遣先の在外公館における人員配置などを総合的に勘案した上で受け入れてきている。外務省としては、その時代の重要な外交課題に応じて在外公館における要員の適正配置を行うことは重要であると考えており、アタッシェの配置についても、時代のニーズに適合したものか否かを中心に見直しを行い、適正な配置を進めていきたいと考えている。
 各国に所在する我が国の大使館ごとの本年四月一日現在の定員数及びアタッシェの府省庁別定員数は次のとおりである。
 インド 定員三十三人、警察庁一人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 インドネシア 定員四十七人、警察庁一人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、厚生労働省二人、農林水産省二人、経済産業省二人、国土交通省二人、防衛省一人
 カンボジア 定員二十人、総務省一人、農林水産省一人
 シンガポール 定員二十八人、総務省一人、財務省一人、厚生労働省一人、経済産業省二人、国土交通省二人、防衛省一人
 スリランカ 定員二十二人、内閣府一人、厚生労働省一人、農林水産省一人
 タイ 定員五十六人、内閣府一人、警察庁一人、総務省一人、法務省一人、財務省二人、文部科学省一人、厚生労働省二人、農林水産省二人、経済産業省一人、国土交通省二人、防衛省一人
 大韓民国 定員五十二人、警察庁一人、総務省一人、法務省一人、財務省一人、文部科学省二人、厚生労働省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省三人、防衛省三人
 中華人民共和国 定員七十九人、内閣府一人、警察庁一人、総務省一人、法務省一人、財務省二人、文部科学省二人、厚生労働省二人、農林水産省二人、経済産業省二人、国土交通省三人、環境省一人、防衛省四人
 ネパール 定員十四人、農林水産省一人、国土交通省一人
 パキスタン 定員二十六人、総務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、防衛省一人
 バングラデシュ 定員二十二人、農林水産省一人、国土交通省一人
 フィリピン 定員五十三人、警察庁一人、財務省二人、厚生労働省二人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人、防衛省一人
 ブルネイ 定員十一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 ベトナム 定員二十八人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 マレーシア 定員三十人、警察庁一人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人、防衛省一人
 ミャンマー 定員二十三人、総務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人、防衛省一人
 モンゴル 定員十七人、農林水産省一人
 ラオス 定員十六人、総務省一人、農林水産省一人
 オーストラリア 定員二十三人、財務省一人、文部科学省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人、防衛省一人
 ニュージーランド 定員十三人、農林水産省一人、国土交通省一人
 パプアニューギニア 定員十七人、農林水産省一人
 フィジー 定員二十一人、農林水産省二人、国土交通省一人
 アメリカ合衆国 定員百人、内閣府一人、警察庁一人、公正取引委員会一人、総務省二人、法務省二人、財務省三人、文部科学省三人、厚生労働省二人、農林水産省三人、経済産業省三人、国土交通省二人、環境省一人、防衛省八人
 カナダ 定員二十四人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 アルゼンチン 定員十五人、財務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 ウルグアイ 定員八人、農林水産省一人
 コスタリカ 定員九人、経済産業省一人
 コロンビア 定員十三人、農林水産省一人、国土交通省一人
 チリ 定員十三人、内閣府一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 ドミニカ共和国 定員十三人、農林水産省一人
 トリニダード・トバゴ 定員十二人、農林水産省一人、経済産業省一人
 パナマ 定員十一人、総務省一人、国土交通省一人
 パラグアイ 定員十人、総務省一人、農林水産省一人
 ブラジル 定員十九人、財務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人、環境省一人
 ベネズエラ 定員十三人、経済産業省一人
 ペルー 定員十九人、総務省一人、農林水産省一人、国土交通省二人
 ボリビア 定員十二人、財務省一人、農林水産省一人
 メキシコ 定員二十一人、財務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人
 イタリア 定員二十八人、警察庁一人、財務省一人、農林水産省三人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 ウクライナ 定員十五人、防衛省一人
 英国 定員六十人、警察庁一人、総務省二人、法務省一人、財務省三人、文部科学省二人、厚生労働省二人、農林水産省一人、経済産業省二人、国土交通省三人、防衛省一人
 オーストリア 定員二十一人、警察庁一人、財務省一人、防衛省一人
 オランダ 定員十九人、法務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 ギリシャ 定員九人、経済産業省一人
 クロアチア 定員八人、文部科学省一人
 スイス 定員十二人、総務省一人、財務省一人
 スウェーデン 定員十四人、法務省一人、厚生労働省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 スペイン 定員十九人、財務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省二人
 セルビア 定員十五人、警察庁一人、公正取引委員会一人、法務省一人、防衛省一人
 チェコ 定員十四人、内閣府一人、法務省一人、厚生労働省一人、農林水産省一人
 デンマーク 定員十一人、農林水産省一人、国土交通省一人
 ドイツ 定員四十三人、警察庁一人、総務省一人、公正取引委員会一人、法務省二人、財務省二人、文部科学省二人、厚生労働省二人、農林水産省一人、経済産業省二人、国土交通省二人、防衛省一人
 ノルウェー 定員十四人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 ハンガリー 定員十四人、総務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 フィンランド 定員十四人、国土交通省一人、防衛省一人
 フランス 定員五十一人、警察庁一人、総務省一人、法務省一人、財務省三人、文部科学省二人、農林水産省一人、経済産業省三人、国土交通省二人、防衛省一人
 ブルガリア 定員十三人、経済産業省一人
 ベルギー 定員十七人、総務省一人、財務省一人、防衛省一人
 ポーランド 定員十七人、農林水産省一人、経済産業省一人、防衛省一人
 ポルトガル 定員十二人、経済産業省一人
 ロシア 定員七十三人、内閣府一人、警察庁一人、総務省一人、財務省一人、文部科学省一人、厚生労働省一人、農林水産省二人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省四人
 アフガニスタン 定員二十一人、文部科学省一人、防衛省一人
 イスラエル 定員二十四人、警察庁一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 イラン 定員二十四人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 クウェート 定員十三人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 サウジアラビア 定員二十一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 シリア 定員十六人、国土交通省一人、防衛省一人
 トルコ 定員十八人、財務省一人、農林水産省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 バーレーン 定員八人、総務省一人
 ヨルダン 定員十六人、総務省一人
 レバノン 定員十三人、財務省一人、経済産業省一人
 アルジェリア 定員十三人、経済産業省一人、国土交通省一人
 エジプト 定員二十七人、財務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、防衛省一人
 エチオピア 定員十四人、総務省一人、農林水産省一人、国土交通省一人
 ガーナ 定員十五人、農林水産省一人
 ケニア 定員十八人、農林水産省一人、経済産業省一人、国土交通省一人、環境省一人
 ザンビア 定員十六人、農林水産省一人、国土交通省一人
 ジンバブエ 定員十四人、総務省一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 セネガル 定員十三人、農林水産省一人
 タンザニア 定員十三人 農林水産省一人、経済産業省一人
 チュニジア 定員十三人、農林水産省一人
 ナイジェリア 定員十六人、厚生労働省一人、農林水産省一人、経済産業省一人
 マダガスカル 定員十二人、農林水産省一人
 南アフリカ共和国 定員二十三人、総務省一人、経済産業省一人
 モロッコ 定員十二人、農林水産省一人、経済産業省一人

 なお、右で述べた大使館以外の三十二大使館については、各府省庁からのアタッシェを受け入れていない。
 
  五 国連安全保障理事会は、本年四月の議長国である英国の提案により、四月十七日、気候変動問題をテーマに公開協議を行った。地域紛争や大量破壊兵器拡散などを議題としてきた安保理が気候変動問題を取り上げるのは初めてである。私は、既に本年三月の環境委員会において、地球温暖化問題を人間の安全保障上から安保理での議題にする必要性を説いた。今後、来年の日本で開催されるサミットに向けて、安保理で、本年と同様地球温暖化問題を集中協議するよう働きかけることが、京都議定書を取りまとめた議長国としての責任と考えるが、政府の見解を示されたい。 五について
 地球温暖化問題は人類の生存基盤にかかわる最も重要な問題であり、政府としては、主要国首脳会議や国際連合の場を含む国際社会における議論を促し、これに積極的に参加していく考えである。
 
  六 政府は、一から五をもって、地球温暖化問題を来年日本で開催されるサミットの最重要テーマとして位置付け、地球温暖化対応の具体策を決定付けるようにすべきではないか。その際、我が国のポスト京都議定書の進め方について温室効果ガス排出削減量の数値を含め具体的に示し、世界をリードしていく姿勢が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。 六について
 地球温暖化問題は、本年ドイツで開催される主要国首脳会議においても取り上げられることとされており、政府としては、来年の日本における主要国首脳会議の場等で、米国、中国及びインドを含む主要な温室効果ガスの排出国が参加する実効性のある国際的な枠組み作りに向けて主導的な役割を果たしていく考えである。
 国際的な枠組み作りについての具体的な進め方については、今後検討を行っていきたいと考えている。
 
  七 安倍アクションプランとも言うべき「二十一世紀環境立国戦略」については、我が国が地球温暖化問題へのリーダーシップを取ることにより、日本の顔を見せるべく、世界の動きとスケジュールを念頭にタイムリーかつ有効な戦略的行動を行えるよう、地球温暖化問題に特化した世界戦略にしたものにすべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
七について
 「二十一世紀環境立国戦略」では、地球温暖化問題が中心的な課題となるが、3R(廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))や生物多様性の保全の問題も含め、環境全般にかかわる中期的かつ戦略的な今後の環境政策の方向性を明示する予定であり、御指摘の地球温暖化問題に特化した世界戦略とする考え方は持っていない。
 
  八 地球温暖化問題と関連して、今月、安倍内閣総理大臣と中国の温家宝首相との間で合意した「環境保護協力の一層の強化に関する共同声明」については、北東アジアのみならず世界規模で見ても大きな前進であり、安倍内閣総理大臣の見識と実行力に敬意を払い、高く評価する。その実効有らしめるために次の四点について提案するので、これに対する政府の見解をそれぞれ示されたい。

 1 環境共同声明における「二〇一三年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する」との文言は、中国の温室効果ガス排出の削減義務化に向かう第一歩であり、高く評価する。政府は、こうした中国の責任ある姿勢を大切にするためにも、米国やインドの両国にも京都議定書やポスト議定書への責任ある参加をさらに働きかけるべきである。
 2 渤海・黄海区域及び長江流域などの重要水域における水質汚濁防止は喫緊の課題であり、すぐに行動すべきである。産学官共同及び技術と資金をパッケージにして直ちに実行あるのみである。それには、ポストODAの資金と技術支援の新枠組みを早急に決めるべきである。
 3 産学官の共同作業が大事である。産学官による実行委員会を設置するとともに、企業とNGOなど具体的参加による行動計画を作成するべきである。
 4 日中に加え、日中韓で環境対策事業を支援する環境ファンドを創設することにより、地球温暖化対策を始め環境対策事業において、民間の活力を利用し効果的成果をあげるべきである。
八の1について
 我が国としては、二千十三年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みについて、米国、中国及びインドを含む主要な温室効果ガスの排出国が参加する実効性のある枠組みとすることが何よりも重要であるとの認識であり、米国やインドに対しても、こうした国際的な枠組みについての我が国の立場について理解を求めていきたいと考えている。

八の2及び3について
 中国の環境問題は、我が国及び我が国を含む地域にも直接影響を及ぼし得る重要な問題である。本年四月十一日、温家宝中国国務院総理の訪日時に行われた日中首脳会談後に発出された「日中共同プレス発表」において、環境保護分野での協力は、共通の戦略的利益に立脚した互恵関係の基本的な内容として協力の重点分野に位置付けられた。この日中首脳間の共通認識を踏まえ、日中間で具体的にいかなる協力を行っていくかについて、御提案の考え方も踏まえつつ、今後検討していく考えである。

八の4について
 本年一月の日中韓首脳会議において、三か国の環境分野での協力を一層強化していくことに合意したところである。右合意に基づき、三か国間での協力をいかに強化していくかについては、今後検討していく考えである。

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【平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問主意書】
 衆議院議員 滝  実

 平成十八年度内にデフレから脱却するということは、政府・与党の公約であったが、三月十五日に政府が了承した三月の月例経済報告で、「消費者物価は横ばいとなっている」として、脱デフレの公約が果たせなかったことを認めた。このことに関して質問する。
 
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 政府はデフレ脱却に向けてどのような政策を行っているのか具体的に示して頂きたい。その政策のGDP押し上げ効果が何兆円程度か、インフレ率引き上げ効果が何%か、試算結果を国民に示す義務があるのではないか。   一及び二について
 政府としては、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣
議決定。以下「基本的態度」というじに沿って、「成長力強化に向けた改革を加速・深化させる」こととしており、また、政府及び旧本銀行は、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行うこととしている。これを前提とした経済の姿については、基本的態度において、GDPの実質成長率が二・○パーセント程度【消費者物価指数の変化率が○ ・五パーセント程度になると見通している。
 なお、政府としては、極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えており、また、本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引上げは、中長期的に、物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するとの考え方に基づいて行われていると承知している。

 
  二 政府・日銀が歳出を抑制し、短期金利を引き上げていく政策は、デフレ脱却の公約を掲げながら、公約を守ろうとする努力を放棄していることを示しているのではないか。    
  三 日本の国民一人当たりの名目GDPの国際順位は、緊縮財政を行うにつれ下がり、平成十七年度には十四位まで落ちた。これは勤労者の給料が下がるのに、それを止めるための適切な経済対策を行わなかったからではないのか。参考のために図一、二を示すと、デフレ下では、積極財政なら国は豊かになり、緊縮財政なら国は貧しくなることを示している。経済が停滞を続ける日本から資金が逃げ出した結果、経済が好調なヨーロッパに資金が集まり、円安ユーロ高が進み、世界のGDPに占める日本の比率は平成十年の十七%から平成十七年の十.三%まで激減したのではないか。 三及び四について
 平成十年から平成十七年にかけて、
世界の名目GDPに占める日本の比率が低下している主な要因としては、世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状況にあったため、名目成長率が相対的に低かつたことなどが挙げられる。政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきた。
 
  四 OECDの Economic Outlook No.八〇 によれば、日本のGDPデフレーターは平成九年を除き、平成五年〜平成十八年の間マイナスが続いている。 OECD三〇か国のGDPデフレーターを見ると、デフレになっている国はほとんどなく、デフレになっても直ぐに立ち直っている。結果的に日本では OECD諸国に比べGDPが年平均三%程度低かったからであり、GDPを引き上げるための政策努力が不足していたのではないか。    
  五 OECDの Economic Outlook No.八〇 によれば国・地方の債務残高が日本だけ急増している原因は、名目GDPの低迷にある。他の国も債務残高は増加しているが、GDPも増加しているため、GDP比で見るとあまり変動していない。長期にわたる経済の低迷と財政の悪化は、デフレ脱却のための経済政策を怠ったためであり、厳しい財政状況を踏まえれば経済成長と財政再建の両立に努めるべきであることは明らかである。それを実現するためには、政府の経済財政モデルによる試算にしたがって財政出動をして債務のGDP比を減らすべきではないのか。 五について
  御指摘の「政府の経済財政モデル」等の計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴ヶため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たつては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
 政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、
経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。

 
  六 経済の低迷は、国民生活に深刻な影響を与えている。経済生活問題が原因の平成十七年の自殺者数は、平成二年の六倍程度にまで増加している。平成七年には六〇万世帯であった生活保護世帯が今や一〇〇万世帯を超えている。財政が厳しいからこそ減税等を行ってGDPを増やして財政健全化の努力をすべきではないか。それにより多数の人命が救われ、膨大な数の生活苦の人たちを救うことができるのではないか。 六について
 五についてで述べた経済財政運営の考え方に基づき、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼすことにより、国民が未来に夢や希望を持ち、より安心して生活できるような社会の実現を月指す必要があると考えている。


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【都道府県が発注する公共事業の竣工式の実施等に関する質問主意書】
 参議院議員 荒井広幸


 私は新党日本の議員であるが、参議院で一人であるので無所属扱いとなっている。このため、国政一般について幅広く質疑を行うことができる予算委員会、決算委員会には割当がないことから、質問主意書という手法で政府の姿勢を問うものである。
 都道府県が発注する公共事業に関しては、全国で様々な問題が発生している。例えば、福島県の公共事業をめぐる談合事件では、前知事側が県発注の公共事業における談合に深くかかわり、公判の過程で明らかになったその構造は、前知事側と懇意の人物が仕切役として談合に関与し、ゼネコンは談合による落札価格の数パーセントを仕切役に謝礼として支払い、その金銭が仕切役から前知事側に流れ、知事選や県内の衆院選等の選挙資金として県議会議員、選挙対策本部等に分配されるというものであったと報じられている。さらに、この仕切役は、談合に関与するほか、違法な選挙活動や政治資金パーティー券の購入のあっせん等も行っていたと報じられている。また、本年三月に竣工した同県小野町のこまちダムの入札に関しても、前述の仕切役が談合に関与し、いわゆる天の声を発したことを公判の中で明らかにしたと報じられている。
 こうした公共事業の実態は、全国的に見て決して特異な事例ではなく、むしろ一般的な事例であると言われており、その結果、国民の税金が無駄に使われ、公共事業に対する信頼が失われている。都道府県の発注する公共事業については、一義的には当該自治体自身の問題ではあるものの、国からの補助が行われているものもあることから、政府において都道府県の発注する公共事業等について、実態を把握する必要があるとの考えのもと、以下質問する。

   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 都道府県の発注した公共事業の竣工時には、都道府県主催の竣工式や受注企業主催の修祓式が当たり前に行われているのか。また、行われている場合、式典の費用は誰が負担しているのか明らかにされたい。 一、三、四、六及び八について
 お尋ねの事項については、政府として承知しておらず、また、新たに調査することは作業が膨大なものとなることから、お答えすることは困難である。
 
  二 都道府県の発注した公共事業の竣工時には、竣工式や修祓式を行わなければならないのか。それらの必要性の有無について政府の見解を示されたい。また起工式等についても同様に明らかにされたい。 二について
 公共事業の竣工時において行われる竣工式や修祓式は、法令に基づくものではなく、政府として詳細を承知していないので、お答えすることは困難である。また、起工式等についても同様である。
 
  三 都道府県の発注した公共事業において、当該事業の入札に談合の疑いがあること等を理由に、竣工式又は修祓式を自粛した例はあるのか明らかにされたい。    
  四 修祓式に知事が出席し、玉串の奉奠を行うことは、一般的に行われているのか。また、行われている場合、その費用負担者について明らかにされたい。    
  五 受注企業が主催者である修祓式に、発注者である知事が出席し玉串の奉奠を行うことは、受注者と発注者のけじめをなくし、両者の結びつきを強め、ひいては両者の癒着を助長するおそれがあり、取りやめるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 五について
 都道府県の発注した公共事業において、各都道府県知事の判断により、受注企業が主催者である修祓式に、知事が出席し玉串を奉奠する例もあることは承知しているが、詳細を承知していないので、お答えすることは困難である。
 
  六 竣工式では、知事の氏名を刻した記念碑等の除幕が行われているケースがあるが、当該記念碑等の作成経費の負担の実情を明らかにされたい。    
  七 知事の氏名を刻した記念碑等の建立は、修祓式への知事の出席と同様、受注者と発注者の結びつきを強め、両者の癒着を助長するおそれがあり、やめるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、知事の氏名を刻した記念碑等の建立は、選挙運動に該当し、公職選挙法に抵触する可能性があるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。 七について
 各都道府県知事の判断により、都道府県の発注した公共事業において建立された記念碑等に知事の氏名を刻する例もあることは承知しているが、詳細を承知していないので、お答えすることは困難である。また、都道府県の発注した公共事業において知事の氏名を刻した記念碑等を建立することは、一般的には、選挙運動に該当せず、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)に違反しないものと考えているが、個別の事案が同法に違反するか否かについては具体の事実に即して判断されるべきものと考える。
 
  八 都道府県が発注した公共事業に係る記念碑等に関しては、問題となる点が多い。過去五年間に全国で建立された記念碑等について、作成経費の負担の実情や刻されている内容の実態を明らかにされたい。    
  九 真に必要な公共事業は行うべきではあるものの、イメージが必要以上に悪くなっているので、「公共事業」という通称をやめ、「みんなの財産」という通称に改名してはどうかと考えるが、政府の見解を示されたい。 九について
 政府としては、「公共事業」という通称を御提案の「みんなの財産」という通称に改名することは考えていないが、公共事業のイメージの向上に向けて、公共事業の必要性の理解促進に向けた広報活動等に引き続き積極的に取り組んでいく所存である。

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【スマートインターチェンジの許可基準及び整備手順の明確化等に関する質問主意書
 
  参議院議員 荒井広幸

 私は新党日本の議員であるが、参議院で一人であるので無所属扱いとなっている。このため、国政一般について幅広く質疑を行うことができる予算委員会、決算委員会には割当がないことから、質問主意書という手法で政府の姿勢を問うものである。
 スマートインターチェンジ(高速道路の本線やサービスエリア・パーキングエリア(以下「SA・PA」という。)、バスストップから乗り降りができるように設置され、通行可能な車両(料金の支払方法)を、ETCを搭載した車両に限定しているインターチェンジ、以下「スマートIC」という。)は、平成十六年度より社会実験が開始され、現在全国で十八箇所の本格導入が行われ、国土交通省は、今後も引き続きスマートICの整備を促進するとしている。スマートICの整備に当たり、平成十八年七月に国土交通省は「スマートインターチェンジ[SA・PA接続型]制度実施要綱」(以下「実施要綱」という。)を策定しているが、整備基準が十分に明確化されていない。
 実施要綱では、スマートICは、地方公共団体が主体となって発意するとされているにもかかわらず、整備基準が十分に明確化されていないことから、国土交通省への要望や陳情を行わざるを得ない状況となっている。私は、要望や陳情の実績によって公共事業の採択が左右されるとすると、実施要綱の制定の意義は失われ、行政上の不透明さを招くほか、政府がそれを既得権益とするようなこととなれば、公共事業の有用性を醜くゆがめ、公共事業執行に対する国民の疑念を払拭することはできないと考える。
 そこで、以下質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 スマートICの設置について、地方公共団体が行っている要望や陳情が必要であり、またその実績が実際に事業の採択を左右することがあるのか、政府の見解を示されたい。
一について
 スマートインターチェンジ(地方公共団体が主体となって発意し、高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第十一条の二第一項の規定に基づき連結許可を受けた同法第十一条第一号の施設で、道路整備特別措置法施行規則(昭和三十一年建設省令第十八号)第十三条第二項第三号のETC専用施設が設置され、同号のETC通行車のみが通行可能なインターチェンジ。以下「スマートIC」という。)の設置の手続については、地方公共団体が「スマートインターチェンジ(スマートIC)[SA・PA接続型]制度実施要綱」(平成十八年七月十日国道有第二十八号国土交通省道路局長通知。以下「実施要綱」という。)に基づき、高速自動車国道法第十一条の二第一項の規定に基づく許可(以下「連結許可」という。)の申請を行った場合に、国土交通大臣が同条第二項の規定に基づき許可を行うものである。当該手続においては、御指摘の要望や陳情は必要ではなく、また、たとえこれらがあったとしても、御指摘の「事業の採択を左右する」ようなことはない。
 
  二 スマートICの設置要件や設置までの進め方等については、誰でも分かるもの、誰が行っても結果が同じであることが重要である。しかし、実施要綱には大きな枠組みだけ書かれており、個別具体の事業に対処するにしては不十分である。こうした部分が緻密に制度化されていないと、最終的には、国に意見を一つ一つ求めていくこととなり、それが過度の行政裁量とそれに伴う数多くの要望・陳情活動を生み出す。当然に、より具体的なガイドラインの作成・公表が必要ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。 二及び六について
 国土交通省としては、スマートICの設置の手続については、実施要綱に基づき支障なく進められているものと認識しているが、地方公共団体等から特段の要望等があれば、より具体的なガイドラインの作成等について、その必要性を含め、検討してまいりたい。

 
  三 これまで実施したスマートICの社会実験において、それぞれの整備効果について公表はされているが、時間短縮効果、地域施設の利活用、医療施設へのアクセス改善等、それぞれ有効と思われた個別事例が羅列されているだけにすぎず、そもそも最低限満たすべき十分な社会的便益の水準が明らかではない。十分な社会的便益の水準について、統一した数値的判断基準を有しているのか、その有無とともに判断基準の内容も明らかにされたい。
三及び四について
 スマートICの社会実験は、本格導入である設置に先立って、その効果や整備及び運営上の課題を事前に把握することを目的として行われるものであり、社会実験の透明性及び客観性を確保する観点から、御指摘の「時間短縮効果、地域施設の利活用、医療施設へのアクセス改善等」の社会実験において確認された効果について幅広く公表しているものである。
 社会実験を踏まえてスマートICを設置するに当たって、スマートICの整備に要する事業費並びに管理及び運営費用とスマートICの設置による目的地までの走行時間短縮、走行経費減少及び交通事故減少の便益の総和との比である費用対便益が一以上であることを社会的便益に係る数値的判断基準としている。また、スマートICの設置により、会社(道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第二条第四項に規定する会社をいう。以下同じ。)が支出する当該スマートICの管理及び運営費用が、料金の増収の範囲内であると見込まれることも数値的判断基準としている。
 
  四 スマートICについては、社会実験の後に、本格導入されることとなっているが、本格導入のための最低限の厳密な数値的判断基準を有しているのか、その有無とともに判断基準の内容も明らかにされたい。    
  五 スマートICについて、現在社会実験を行っているものは、本格導入までの進ちょく状況、手続の段階等を公表し、整備段階の透明性・客観性を確保すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 五について
 スマートICの社会実験については、地方整備局若しくは北海道開発局又は沖縄総合事務局(以下「地方整備局等」という。)、地方公共団体、会社その他の関係機関で構成される社会実験協議会により、社会実験の内容等がウェブサイト、報道機関等を通じて公表されているところであり、整備段階での透明性及び客観性は確保されているものと考えている。

 
  六 これまでの社会実験の成果をいかし、スマートICの整備基準を体系的にまとめ、実施要綱よりも更に精緻な数値的基準を公表し、これに基づきスマートICを整備していくべきである。特に、課題が存在する場合等は、論理の飛躍がないように全体の論理構成を強化しつつ、いかなる施策が必要なのかが分かりやすく、そして可能なものについては代替案を示すなどチェックの充実が必要である。併せて、個別事業ごとのチェックとともに、全体を通しての評価も参考とできるよう、チェックとその再利用という観点も含めて、事業推進上のコミュニケーションツールとして活用することも重要と思われる。さらに付言すれば、そうした普遍的な最低限の客観的な判断基準さえ整えることができれば、スマートICの社会実験結果についてのある程度の見通しが可能となると考えるが、政府の見解を示されたい。    
  七 実施要綱で定められているスマートICの実施要件に欠かせない地区協議会について、具体的な開催の手続、開催のために満たすべき最低限の条件について明らかにされたい。
七について
 地区協議会の開催手続、具体的な運営方法等については、地区協議会の構成員となる地方公共団体、地方整備局等、会社その他の関係機関の間で検討されて調整されることとなる。
 
  八 実施要綱では、地区協議会で検討・調整する主な事項として、「@当該ICの社会便益、A当該IC及び周辺道路の安全性、B当該ICの採算性、C当該ICの整備方法、D当該ICの管理・運営方法、Eその他当該ICの設置・管理・運営する上で必要な事項」が掲げられている。しかし、地方公共団体が発意する場合、これらの検討・調整する事項について、どの程度まで主体的に予め調査をしておけばよいのかが明らかでない。地区協議会を開催するに当たって、地方公共団体はこれらの検討・調整する事項についてどの程度まで最低限調査する必要があるのか明らかにされたい。 八について
 地区協議会を設置するに当たって、地区協議会で検討及び調整される事項について、どの程度まで地方公共団体が主体的にあらかじめ調査しておくかは、発意者である地方公共団体において主体的に判断されるべきものであると考えている。
 
  九 実施要綱では、国土交通省の地方整備局若しくは北海道開発局又は沖縄総合事務局は、地区協議会における検討・調整が進むよう議事の進行に努めなければならないと規定しているが、実際には具体的にどのようなことを行っているのか明らかにされたい。 九について
 地方整備局等は、会議の議事進行、資料の調製、連絡調整等を行っている。
 
  十 実施要綱では、SA・PAに接続するスマートICの整備は、地区協議会において、国土交通省の地方整備局若しくは北海道開発局又は沖縄総合事務局、地方公共団体、各高速道路株式会社(以下「会社」という。)、その他の関係機関との間で検討・調整されることとなっており、それに基づいてスマートIC実施計画書が作成され、国土交通大臣の連結許可を受けなければならないとされている。スマートIC実施計画書の策定から、国土交通大臣の連結許可までどのような審査が存在しているのか、それぞれの審査に要する日数はどのように決められているのか明らかにされたい。
十について
 一についてで述べたとおり、スマートICの設置に当たっては連結許可が必要であり、連結許可に当たっては、連結位置及び連結予定施設、連結を必要とする理由、連結のために必要な工事に要する費用の概算額等、高速自動車国道法施行規則(昭和四十六年建設省令第十九号)第二条第一号から第五号までに掲げる事項について審査しているところである。
 また、連結許可の申請から連結許可までに通常要すべき標準的な期間は、二か月間としている。
 
  十一 そもそも、SA・PAは会社が保有し、自主的に経営されるものである。それゆえ、スマートICの設置は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と会社との間で締結される協定の中に含め、その変更を許可するだけで十分ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。 十一及び十二について
 連結許可は、高速自動車国道における自動車の高速交通を確保することができるかという観点からなされるものであり、スマートICが連結されることによる高速自動車国道の交通への影響を個別のスマートICごとに勘案してなされる必要がある。一方、会社と独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)との間で締結する協定(独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法(平成十六年法律第百号)第十三条第一項に規定する協定をいう。)は、機構が高速自動車国道に係る道路資産の保有及び貸付け、債務の早期の確実な返済等を行うといった業務を適切に実施していくために会社と締結するものであり、連結許可とは異なる観点で行われるものである。
 また、連結許可に当たっては、道路整備特別措置法第三十条第一項第一号により、国土交通大臣は会社の意見を聴取することとなっており、個別に連結許可を行うことが、会社の自主性を阻害することとはならないものと認識している。
 
  十二 スマートICが高速自動車国道法に定められた施設であるとしても、何故、個別のスマートICごとに国土交通大臣の連結許可を受ける必要があるのか、その個別具体的な整備について許可を与えるのは、SA・PAを保有・管理する会社の自主性を尊重する民営化の意図に反しないか、政府の見解を示されたい。
   
  十三 スマートICのアクセス道路について、道路管理者が国であるもの、地方公共団体であるものの内訳をそれぞれ示されたい。 十三について
 平成十九年四月二十日時点で設置されているスマートICは全国で三十一箇所であり、これらのスマートICへ連結する道路の道路管理者はすべて地方公共団体となっている。
 
  十四 道路管理者が地方公共団体である場合、国が関与する地区協議会で定められたスマートIC実施計画書が作成され、国土交通大臣の連結許可が存在するのであれば、道路整備の補助金は自動的に付与されるべきであり、改めてその審査は必要ないのではないか。もし改めて審査する場合、どのような必要性から審査するのか、政府の見解を示されたい。また審査内容と事業の優先順位、採択基準など具体的に公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
十四について
 スマートICの実施計画書は、スマートICの設置により十分な社会的便益が得られるかどうかという観点等についての地区協議会における検討及び調査を踏まえて策定されるものであり、また、連結許可は、高速自動車国道における自動車の高速交通を確保することができるかという観点から行われるものである。
 一方、道路の整備に係る補助金等は、地方公共団体の申請に基づき、予算の範囲内で、効率的かつ効果的な事業について交付するものであり、その際には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第六条第一項に基づき補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤りがないか等の観点で審査等を行うものであり、スマートICの実施計画書の作成や連結許可とは異なる観点で行われるものであるため、改めて審査が必要なものである。
 また、当該補助金等に係る具体的な基準については、公表しているところであり、個々の事業については、地方公共団体の申請に基づき、国土交通省において、当該基準に該当することを確認し、費用対効果分析を含め総合的な評価を行った上で、補助金等の交付を行っているところである。
 
  十五 今こそ政府は、企画立案過程における論理的分析手法の下に、要望や陳情を行う必要のない透明性の確保された制度を一つでも多く導入する必要があると思われる。即ち、第一に、目標と現状との因果関係を分かりやすく明示し、第二に、目標達成のための事業見通しを示すとともに、当該事業目標の実施のための具体的手法・手段を提示する等、真に必要な公共事業であるか否かを判断するものが求められている。こうした考えに基づいて真に必要な公共事業を推進するためには、スマートICに関する問題で指摘した考えに立って手続と採択基準の透明性・合理性を確保すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 十五について
 公共事業については、事業の効率性やその実施過程における透明性の一層の向上を図るため、新規事業の採択時等における評価システムを導入し、評価に当たっては、定量的及び定性的な評価を実施するとともに、評価手法、評価結果等を公表すること等により、透明性や合理性を確保するよう努めているところである。

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【経済モデルによるシミュレーションに関する第三回質問主意書】

 衆議院議員  滝   実
 

  平成十九年二月十三日提出の経済モデルによるシミュレーションに関する質問主意書に対する答弁書(第一次答弁書と略称)を平成十九年二月二十三日にいただき、これに関して平成十九年三月一日提出の再質問主意書(再質問主意書と略称)に対する平成十九年三月九日の答弁書(第二次答弁書と略称)には、「「経済財政モデル(第二次版)」における乗数表は、あくまで計量経済モデルの特性を検討するために作成したものであり、また、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである」と記されている。このことに関連して以下の点を再度質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
 
一 内閣府のモデルは誤差が大きくて信頼性を欠くという指摘がある。例えば、平成十七年四月に発表された「日本経済中長期展望モデル」では民間住宅固定資本形成の決定係数は〇.〇六八、それ以外にも決定係数が〇.一を下回るものがある。このような方程式を使うと誤差が大きくなり、信頼性を欠くという指摘を受けるのは当然である。そのようなモデルを使用した結果を引用した経済財政白書や「日本二十一世紀ビジョン」「改革と展望」「進路と戦略」も政府の経済政策を行う上での参考として使われている。
 それらと同程度の信頼性で「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」という経済財政モデルの結論は参考にされるべきではないのか。何となれば第一次答弁書には、「「経済財政モデル(第二次版)」においては、・・・継続的に・・・景気刺激策を行った場合について、・・・公債等残高の国内総生産比率は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」と記されており、ここでは、誤差を問題にしていないからだ。

一から四までについて
 「経済財政モデル(第二次版)」(平成十八年三月内閣府公表)等(以下 「経済財政モデル」という。)は、経済理論を踏まえ、過去における変数相互の関係を精査した上で作成されたものであるが、これらを含めた計量経済モデルによる計算結果は、御指摘の乗数表の一年目、二年目及び三年目以降の値を含め、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。さらに、経済財政モデルにおける乗数表は、ある変数が独立的に変化した場合に、その変化が他の変数に及ぼす影響を示したものであり、現実の経済においては、様々な要因が複雑に影響し合うこともあり、ある政策が実施された場合に、必ずしも乗数表に示されたとおりの影響が生じるとは限らないことに留意する必要がある。
 したがって、経済財政モデルにおける乗数表や「日本経済の進路と戦略参考試算」 (平成十九年一月十八日経済財政諮問会議提出)等の計算結果は、いずれも経済政策を検討する際に参考となるものであるが、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々
 
  二 内閣府の試算は、誤差があるにしても金利を低めに誘導しながらの財政出動は、経済成長を加速し、デフレ脱却を助け、財政を健全化する可能性が高いことを示している。仮に、政府・日銀がそれと反対に金利を高めに誘導し、歳出削減をする政策を選択するのであれば、国民経済と国の財政に重大な悪影響を与える可能性があるのであるから、その政策を敢えて選択する理由を国民に納得できるまで説明する必要があるのではないか。 の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
 なお、政府としては、極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えており、また、本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引き上げは、中長期的に、物価安定を確保し、持続的な成長を実現して
 
  三 第二次答弁書には「政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。」と記されている。ところで、第一次答弁書では、個人所得税減税又は公共投資増額は公債等残高の国内総生産比率を低下させ、少なくとも当初の一〜二年は財政再建に役立つことを認めている。そこで、再質問主意書で、三年目以降については短期金利引き下げをセットにして行えば、財政再建に役立つことが内閣府の経済財政モデルから結論付けられると指摘したところ、第二次答弁書ではモデルの誤差の問題に言及されている。しかし、モデルでは三年目には公債残高の増大で金利が上昇するため国内総生産に悪影響を与えるとしている部分に関して何故誤差を持ち出すのか。それではモデル全体が誤差で囲まれていて、モデルを使って説明しようとすること自体を否定することになるのではないか。
 三年目以降は誤差が大きくなって信頼性が落ちて、あまり参考にならないというのであれば、当初の一〜二年だけのデータを信頼すればよく、「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」ということを、この経済財政モデルは一〇〇%支持することになるのではないか。

いくことに貢献するとの考え方に基づいて行われていると承知している。  
  四 再質問主意書では、日本銀行による短期金利引き上げはGDP成長率を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものであると指摘した。これに関して第二次答弁書には誤差を考慮するようにと記している。これは、誤差のために符号が反対になる、すなわち短期金利引き上げは経済成長を押し上げ、デフレ脱却を助け、国・地方の債務残高のGDP比を下げる効果があるかもしれないという意味か。そうであれば、乗数の全てが、その符号さえ確かではないほどの深刻な問題を抱えており、シミュレーション全体が信頼に値しないということを意味するのではないか。
 そうではなく、符号は正しいものの、その絶対値に誤差があるというだけなら、「日本銀行の短期金利引き上げは、経済成長を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものである」という結論にいささかの変更をもたらすものではなく、短期金利引き上げは、成長力底上げを目指す政府の方針に逆らうものと言わざるをえないのではないか。
   
  五 日本銀行の長期国債保有に関して日本銀行券の発行残高を上限にしていると、深刻な問題に遭遇する。電子マネーの増加は、必然的に日本銀行券の発行残高を減少させることになるからである。また、インフレ率が上昇し始めると、タンス預金が市場に出てくると大幅に日本銀行券の発行残高を減少させる。そのとき日本銀行は大量の国債を売らざるを得なくなり、それが景気を冷やし、デフレに逆戻りさせる。したがって、日本銀行の長期国債保有に関する自主規制は、日本銀行の重大な金融政策の足かせとなり、日本のデフレからの脱却と財政健全化を極めて困難にするのではないか。 五について
 日本銀行の長期国債保有残高については、日本銀行の長期国債買入額が日本銀行保有の長期国債に係る償還額を下回っていること等から、過去最高であった平成十六年八月末の約六十七兆三千億円から、平成十九年二月末には約五十一兆九千億円に減少している。
 一方、この間、日本銀行券発行残高は、約七十一兆六千億円から約七十五兆七千億円に増加しており、これに伴い、日本銀行券発行残高と長期国債保有残高の差額は、約四兆四千億円から約二十三兆七千億円に拡大している。
 このような状況に照らせば、仮に日本銀行券発行残高が減少に転じたとしても、御指摘の「長期国債保有に関する自主規制」が制約となることにより、直ちに日本銀行が保有する長期国債を売却せざるを得ない事態にはならないものと理解している。

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【夕張市の財政再建に対する国の対応に関する質問主意書】

  衆議院議員  滝   実

 夕張市の財政再建案の作成に関する質問主意書に対する平成十八年十二月十五日付けの内閣の答弁書で、総務省としては、「夕張市が多額の赤字を抱えるに至った要因は」、同市に問題があり、同市が「今後策定する財政再建計画により、債務の全額を支払うべきものと考える」との見解を示している。しかし、内閣の答弁書に示されているような見解で夕張市の再建はできないほど赤字額は深刻な大きさである。夕張市の財政再建に関する質問主意書は平成十八年十二月始めに新党日本として夕張市へ行った結果に基づくものであり、現地調査によって、夕張市が赤字を抱えた要因も夕張市だけに責任を問えるものではなく、また、赤字額は市の責任だけで解消できるものではないことも判明してきた。それを裏付けるように十二月二十九日に総務大臣が夕張市を訪れた際の記者会見では、子供と高齢者には特別な配慮をすべきであり、夕張市と人口規模が同程度の団体が財政健全化に頑張っているのと同じように頑張るならば夕張市を支援したいとして、総務省の姿勢は質問主意書に対する答弁書とは違ってきていると受け取れる発言をしている。
 過去の地方財政破綻への対応は昭和三十年の地方財政再建促進特別措置法(以下「財政再建法」と略称)の制定に始まる。この財政再建法の制定をめぐり国は財政再建の責任はないとの姿勢をとり続けた。しかし、多くの地方公共団体が財政破綻したのは、国が国際収支改善のため財政金融一体の緊縮政策を押し進め、十分な地方財政措置を講じてこなかったからであるとの声が高まった結果、極端に財政が破綻している地方公共団体を救済することで財政再建法の制定に踏み切らざるを得なくなった。
 現在の地方財政も当時と同様な事情の下に置かれている。それは、昭和六十一年四月のいわゆる前川リポートにより国が経済政策を転換した事情があるからである。前川リポートでは、日米経済摩擦を回避するため、日本企業の海外投資の拡大と国内の公共投資の拡大、農産物の輸入規制の撤廃、国内石炭から輸入石炭への切り替えなどを提言し、その通りに忠実に実行された。この結果、地方の産業は製造業の空洞化を土木建築業で穴埋めする構造に転換するとともに、わずかに残っていた国内の炭鉱のほとんどが閉山に追い込まれた。





 こういう産業構造の転換が進んだ末に公共投資の削減が始まり、地方の産業は一気に衰退してきた。同時に、戦後積み上げてきた地方財政制度を前提に財政運営を行ってきた地方公共団体にとっては、三位一体の改革の名の下に平成十五年度から行われた国庫補助負担金と地方交付税の削減は致命的な打撃となった。
 夕張市の財政破綻は、炭鉱閉山に伴う後始末を引き受けざるを得なかった特異な事情のうえに、全国の地方公共団体に共通の国費削減が重なったことによるものである。なぜ夕張市が炭鉱閉山に伴う後始末を引き受けざるを得なかったかと言えば、昭和五十七年の北炭夕張の閉山に際し安倍晋太郎通産大臣が再開発に最大限の努力をする、地域経済への影響を考慮してそれなりの援助をする、そして市の財政を援助するとの談話を発表し、地元はこれに期待を寄せていたからだ。これに望みをかけた従業員の半数が地元に留まり、成行きを見守っていた。それだけに、夕張市の財政破綻は重篤であり、三百五十三億円にも及ぶ赤字を四十四億円にすぎない標準財政規模の市が十八年間の財政再建計画で解消するというのは現実離れしている。昭和三十年度から再建に取り組んだ徳島県小松島市は当時としては最長である十五年間の財政再建計画を策定したが、標準財政規模に対する赤字額は推定で三倍、最近の福岡県赤池町は平成三年度から十二年度にかけて再建に取り組み標準財政規模に対する赤字額は一.二倍であった。ところが夕張市の標準財政規模に対する赤字額は八倍であり、解消すべき赤字額は過去に例がない大きさである。そこで次の点について質問する。
 
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 過去に例がないほど巨額の赤字であるため、夕張市の財政再建計画は市に課せられた事務を遂行できず、地方公共団体として存続できない恐れがあると考えるが、政府としての見解を示されたい。 一について
 夕張市の財政再建計画は、住民生活に必要な事務事業を行うことを前提に財政再建を図ることができるものとして同意したものであり、御指摘のような懸念は生じないものと考えている。
 
  二 夕張市の財政再建計画によれば、公債費のほかに赤字解消額を別枠で見込む計画となっているが、これを合算した毎年の公債費総額は標準財政規模の七〜八割、最後の数年間は九割を占める。このような市としての事務を遂行できないような財政再建計画を作っても再建計画が行き詰まり、市政が混乱することは目に見えている。国債においても償還期間は六十年とされているので、夕張市において策定された財政再建計画の期間を今後延長して、六十年とすべきではないか。 二について
 財政再建期間については、計画の確実性や実効性をを確保し、借入金等の利子負担を軽減するため、できる限り短期であることが望ましいと考えており、一についてで述べたとおり実行が可能な計画であると考えているので、この計画期間を更に延ばすべきとは考えていない。
 
  三 総務大臣は財政再建計画に同意したが、地方財政法または財政再建法を改正せずに夕張市が三百五十三億円に及ぶ一時借入金中心の財政再建計画を作るのは違法ではないか。 三及び四について
 総務省としては、夕張市の財政再建計画は徹底した歳出削減と歳入確保により実質収支の赤字を計画的に解消するものとして策定され、北海道の貸付けは同市の財政再建計画の実施過程において必要となる資金手当を行うものと承知しているが、これらの団体における具体の財務処理が法令にのっとって適切に行われるよう助言してまいりたい。
 
  四 北海道が夕張市に対して財政再建計画の裏付けとして当初三百六十億円の融資と実質的な利子補給を行うこととされている。北海道そのものもいわゆるヤミ起債の形をとることにはならないのか。    
  五 北海道が夕張市に対する融資資金三百五十三億円の利子を軽減する部分を地方交付税で財源手当てを行うといわれているが、長期にわたり多額にのぼる措置を地方交付税で行うのは不適切ではないか。 五について
 市町村が行う事務に対し都道府県が必要に応じ支援することは一般的に行われており、夕張市の財政再建期間中において、安定した市民生活を確保するため、北海道の同市に対する支援について交付税措置などを行うことは不適切であるとは考えていない。なお、支援の具体的な在り方については現在検討中である。
 
  六 新たに国会に提出された「地方公共団体の財政の健全化に関する法律案」では、地方公共団体が損失補償をするなど密接に関係する事業を含めて財政状況を公表することとされており、夕張市以外にも財政破綻の状況にある地方公共団体が表面化するものと予想される。しかし、これまでは、夕張市のように財政再建法に準拠するという建前をとりながら建前にルールらしいものがない状況では、財政再建をしようとしても再建の手段を検討する手掛かりを把握しにくい。今後に備えて再建の手段を含め財政再建のルールを設けておくべきではないか。

 
六について
 御指摘の地方公共団体の財政の健全化に関する法律案においては、財政状況が著しく悪化し財政再生基準を超えた地方公共団体は、事務・事業の見直し、組織の合理化等の歳出削減計画、地方税の徴収成績の向上、使用料等の額の変更、財産処分等の歳入増加計画等を内容とする財政再生計画を策定することとされているが、その内容については、当該団体の赤字の額、財政力、行財政規模、その他の事情を勘案して個別の団体ごとに必要な具体的措置が定められるべきものであると考えている。

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【夕張市の財政再建案の作成に関する質問主意書】  
  衆議院議員  滝   実


 新党日本は党代表の田中康夫、党所属衆議院議員滝実、同参議院議員荒井広幸が夕張市に赴き財政再建案作成の渦中にある市民のせつない声を聞き、作成中の財政再建案に欠落している市民生活保護の視点を今後の対応に取り上げるべきと考え、以下の点について質問する。

   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  一 夕張市は地方財政再建促進特別措置法(以下「財政再建法」と略称)を準用して財政再建を図るとの方針のもとに総務大臣に協議する再建計画を作成中と聞いている。しかし、累積赤字と長期借入金とを合わせて632億円に及ぶ巨額の債務があり、このうち360億円を20年で償還する計画といわれているが、従来方式の再建計画で解消するにはあまりにも債務額が大きく、債務解消方法を検討すべきではないか。 一について
 総務省としては、夕張市が多額の赤字を抱えるに至った要因は、北海道企画振興部が本年九月十一日に公表した「夕張市の財政運営に関する調査」で指摘されているように、同市財政の許容範囲を超えた財政支出、収入の大幅な減少への対応の遅れ、財務処理手法の問題などにあり、同市が、地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号。以下「再建法」という。)に基づいて今後策定する財政再建計画により、債務の全額を支払うべきものと考える。
 
  二 夕張市には多くの事業者が経営する多くの炭坑があり、いずれも閉山を余儀なくされてきたが、現在の市の財政負担の原因となっているのは北炭夕張炭鉱株式会社(以下「北炭」と略称)の炭坑の閉山である。北炭が職員の退職金が払えないのを憂慮した国が退職金の財源に充てるため北炭の施設を有償で夕張市が引き継ぐよう誘導したのではないか。それゆえ夕張市は閉山処理のため引き継いだ施設を活用する事業を展開することになった。事業費の3分の1は国と北海道が負担したものの残り3分の2は夕張市が負担せざるをえず、しかも国が平成12年以降デフレ政策を選択したために夕張市の事業は破綻したものといわざるをえない。
  このことは、当時、国は夕張市に対し異常に多額の起債を許可し、異常に多額の特別交付税を交付した事実に裏付けられているところであり、夕張市の財政破綻は国にも責任があるのではないか。

二について
 お尋ねの北炭夕張炭鉱株式会社(以下「北炭」という。)の炭鉱の閉山に伴い、北炭の職員の退職金に充てるため夕張市に北炭の施設を有償で引き継ぐよう国が誘導したのではないかとの御指摘に関しては、そもそも北炭の職員の退職金は、国並びに石炭鉱業合理化事業団及び新エネルギー総合開発機構(現在の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が北炭に交付した「石炭鉱山整理促進交付金」(総額約五十二億四千万円)によりほぼ満額手当てされており、北炭は退職金の充当のため、その施設を同市に引き継ぐ必要はなかったものと認識している。
 また、同市の財政破たんは国にも責任があるのではないかとの御指摘に関しては、同市が多額の赤字を抱えるに至った要因については、一についてで述べたとおりと考えており、そうした御指摘は当たらないと理解している。
 
   炭坑の閉山処理を夕張市に押し付けてきたのは国や北海道であり、財政再建法の条文にこだわり市から提出があればその是非を検討するというのではなく、夕張市と共同で再建計画を考えるべきではないか。 三について
 財政再建計画は、再建法の規定に基づき、財政の再建を行おうとする地方公共団体によって策定され、総務大臣に協議し、その同意を得るものとされており、夕張市が主体的に策定すべき同計画を国が同市と共同で策定するものではないが、同計画の策定に当たり、総務省として必要な助言をしてまいりたい。
 
   国も北海道も現行の財政再建法による従来からの再建方式に捉われているようであるが、金融機関の事実上の協力も要請すべきではないか。 四について
 総務省としては、夕張市が、債務を全額履行することを前提として財政再建計画を策定している過程にあり、その方向で対応することが基本であると考えているが、同計画の具体的内容がいまだ明らかでない段階であり、今後策定される同計画の内容を待って適切に対処してまいりたい。
 
   財政再建の枠組みとして歳出削減の基準を設定するのに同じような人口の市町村である岡山県里庄町を参考にするよう指示しているようであるが、人口は同じでも高齢者の比率、面積、中核となる都市からの距離、気象状況など大きな違いを勘案して修正する必要があるのではないのか。
  例えば、地域の緊急避難場所であり、市民生活を支える場所である公民館を閉鎖し、電気や水道も切断している。また、救急車の体制を現行の2台から1台にすることが検討されている。市民病院の整備を前提にしてとの条件づきではあるようだが、仮にその前提があっても夕張市の地形を考えれば1台にするのは無理がある。このように、当地域の厳しい自然条件を無視する財政再建案が市民を不安にしているのを改めるべきではないか。
五について
 夕張市が財政再建計画を作成するに当たっては、人口や産業構造が類似する団体における効率的な行財政運営等を参考にしながら策定すべきものであり、その旨助言をしているが、財政再建を進めるに当たっても住民に対する基礎的な行政サービスの提供を続けていくことが前提となるものであり、今後、同計画の具体的な内容が明らかになる中で、総務省として、その点を確認してまいりたい。
 
   財政再建は税収入を確保しながら累積債務を償還することを目的としている。そうであるならば若い働き手が市外に流出するようなことは避けなければならない。夕張市の中核である市関係の観光施設は閉鎖し、市役所の職員にも希望退職者が多いといわれている。市内に雇用の場がないのだから、その結果は市全体の経済活動が止まってしまう事態になる。すでに夕張メロン農家はメロン作りに支障が出ると心配しているように、ひたすら歳出を削減し、税収入や手数料の引き上げを図るだけでは財政再建を軌道に乗せることはできない。
これまでも夕張市内に工場団地を造成したものの企業誘致が成功したとはいえない状況にはあるが、省庁の枠を超えて、夕張市がどうして立ち行けるのかとの観点を取り入れることが必要であり、地域再生、特区、再チャレンジとか様々な言葉が出ている通りに地域再生を財政再建案で取り組むべきではないか。

六について
 夕張市の財政再建計画は同市が策定するものであり、その中で、国の制度を始めとする様々な制度の活用について同市において検討されるべきものと考えているが、財政再建に資するようなものがあれば、こうした制度の活用も含め、同市の財政再建が円滑に進むよう総務省として必要な助言をしてまいりたい。
 
   夕張市では財政再建の枠組みの説明会を行っている。しかし、夕張市で生活を続けるための最低限の市民サービスが受けられるかどうかという肝心なことに市当局が答えることができないため上意下達の集会に留まっている。これは国や北海道が財政再建法の手続きに縛られて具体的なことは話さないようにという制約をつけていることによるものであり、十分な話合いができるようにすべきではないか。 七について
 国又は北海道において、夕張市民に対する説明内容等に関与したことはない。
 総務省としては、今後、財政再建計画を具体化する中で、夕張市当局が責任をもって住民に対し十分な説明を行い、住民の理解と協力を求めていくものと考えている。
 
   現在の大夕張ダムを飲み込む巨大な夕張シューパロダムの建設が行われている。このダムが完成すれば夕張市への固定資産税と電源立地促進対策交付金が増えるとささやかれている。そのような期待がもてるのか。
 そもそも夕張シューパロダム建設の根本に立ち返えれば、ダムの目的の一つである農業利水での効果に対する疑問、水没が予定されている「三弦橋」やその他自然環境の保存の要請があるにも拘わらず、日本有数の巨大ダムの建設に着手した。総事業費1400億円のうち、すでに800億円の工事費が支出されているが、完成まで600億円もの工事費を要する。この際、時代の変化を受け止めて、この巨額の資金を夕張市への支援に振り替えることを検討すべきではないか。
八について
 固定資産税については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十八条第一項の規定により、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区、地方開発事業団及び合併特例区は非課税となっているが、水道又は工業用水道の用に供するダムの用に供する固定資産は、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和三十一年法律第八十二号)に規定する固定資産に該当することから、同法の規定に基づき算出される額が、毎年度、当該固定資産の所在する夕張市に交付されることとなる。
 電源立地地域対策交付金については、発電の用に供する施設の設置及び運転の円滑化を図るため、当該施設の所在する市町村等に対して交付されるものである。夕張シューパロダムに係る発電所が設置又は運転されるのであれば、夕張市からの申請に基づき、電源立地地域対策交付金交付規則(平成十六年文部科学省・経済産業省告示第二号)の規定に従って、出力等を基礎として算出される額が交付されることとなる。
 御指摘の夕張シューパロダムが完成することにより、夕張川、千歳川及び石狩川沿川地域の洪水防御、流水の正常な機能の維持、夕張市のほか五市五町の農地に対する農業用水及び江別市のほか三市一町一企業団への水道用水の供給並びに発電の目的が達成されることとなる。同ダムは治水及び利水のため必要なダムとして建設しているところであり、同ダムに係る事業費については、振り替えることは困難である。

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【消費者金融利用者及び多重債務者等の実態解明等に関する質問主意書】
 
  幹事長 荒井広幸

 今般議論が行われている、いわゆる貸金業規制法及び出資法の見直しに当たり、グレーゾーン金利の問題や貸金業に係る登録制及び検査体制の整備、あるいは信用情報等の個人情報の適切な取扱いと消費者金融各社の適切な情報開示スキームの整備等を図るべきと考える。そしてその前提として、まず、消費者金融を中心とした無担保金融の利用者の全体像、多重債務者の借入の実態、消費者信用団体保険の現状、消費者金融各社と大手金融機関及び金融庁の関係等を明らかにする必要がある。これらの実態に関しては、本年五月十八日の参議院行政改革に関する特別委員会における小泉総理との質疑のため、金融庁に調査依頼をしたところであるにもかかわらず、それ以来、明確な回答が返って来ておらず、質問主意書にて、その実態解明を改めて求めるものである。
そこで、以下のとおり質問する。
   
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
 
 新聞報道によれば、全国信用情報センター連合会の調査により、消費者金融の利用者実態について、消費者金融利用者数約千四百万人、一人当たりの平均借入残高約百一万円、五社以上の利用者約二百三十万人という数字が示されているものの、その詳細はもとより、銀行系ローンやクレジットカード利用者等を含めた消費者向無担保金融の利用者実態の全体像が明らかとなっていない。政府は責任を持って、その全体像を明らかにすべきである。

1 全国信用情報センター連合会以外の各信用情報機関のデータも踏まえ、消費者向無担保金融利用者数の最新の推計を明らかにされたい。

2 1で示した利用者について、一人当たりの平均借入社数、借入額、借入残高、延滞の状況を示されたい。また、借入社数別の人数、借入額、借入残高、延滞の状況についても同様に示されたい。

3 1で示した利用者について、利息制限法上の上限金利を超える借入をしている者の人数、件数、一人当たりの平均借入金額を示されたい。また、利息制限法上の上限金利を超えて支払われる一人当たりの平均利息金額を示されたい。
一の1について
貸金業者の全国信用情報センター連合会等の信用情報機関への加入は任意であること、複数の信用情報機関に加入している貸金業者があること等から、各信用情報機関の公表する登録件数等から御指摘の消費者向け無担保金融利用者の総数を推計することは困難である。


一の2及び3について
消費者向け無担保金融利用者の組数を推計することが困難であること等から、お答えすることは困難である。

 
 
 新聞報道によれば、消費者金融各社は貸付に当たり消費者信用団体保険への加入を利用者に強制しており、一般的な保険金は三百万円とされている。昨年度の自殺による債権回収は三千六百四十九件に上っているが、消費者金融各社は裁判で確定した債権金額を上回る保険金を受け取っており、これは、債務者の命を担保に返済を確保しているといえる。こうした中、政府においては、社団法人生命保険協会(以下「生命保険協会」という。)に対し、被保険者の同意確認や死亡診断書の確認等のガイドラインの策定等を要請していると承知しているが、消費者信用団体保険の実態、消費者金融各社の保険契約の利用状況の全体像及び生命保険各社から消費者金融各社への保険金支払の実態を、責任を持って明らかにすべきである。

1 貸付契約に際し、消費者金融連絡会に加盟する消費者金融各社(以下「大手消費者金融各社」という。)の消費者信用団体保険の付保状況、また、中小消費者金融各社の付保状況をそれぞれ示されたい。さらに、消費者向無担保金融の利用者のうち、消費者信用団体保険の被保険者数及びその割合を明らかにされたい。

2 1で示した被保険者について、一人当たりの平均保険契約件数及び保険金額を明らかにされたい。また、保険契約件数別の人数及び一人当たりの平均借入額を示されたい。

3 利用者の借入金額や借入機関等によって、消費者信用団体保険の保険金額、保険期間、保険料に違いはあるのか。その実態を明らかにされたい。また、実際に支払われる保険金が本来の債務額を超えることがないよう担保される仕組みであるのか。実際に保険金が支払われているケースについて、利用者の借入金額別にみた支払件数及び一人当たりの平均支払金額を明らかにされたい。

4 借入契約の際の被保険者の同意確認や死亡保険金の支払に当たっての死亡診断書の確認等の方法を明らかにするとともに、すべての支払事案に関してその確認が行われているのか示されたい。
5 保険金支払に当たって、死亡診断書の確認を不要とし、家族に知らせないなど、不当に消費者金融側に有利な運用ルールが作られているのではないか。適正な保険金支払のための規制を政府はどのように行っているのか明らかにされたい。
二の1について
消費者金融連絡会に加盟する消費者向け無担保貸金業者(以下「大子手消費者金融会社」という。)及び他の消費者向け無担保貸金業者等の消費者信用団体生命保険の付保状況については、平成十八年三月末における被保険者数は、それぞれ延べ九百九十三万二千四百十一人及び延べ三百五十万四千三十一人であると承知しているが、各社ごとの被保険者数については、各社の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあること等のため、答弁を差し控えたい。なお、消費者向け無担保貸金業者等の消費者信用団体生命保険の平成十八年三月末における被保険者数は延べ千三百四十三万六千四百四十二人であると承知しているが、一の1についてで述べたとおり、消費者向け無担保金融の利用者の総数を推計することは困難であるため、御指摘の「割合」をお答えすることは困難である。


二の2について
二の1についてで述べた延べ千三百四十三万六千四百四十二人の披保険者についての平成十八年三月期における一人当たりの支払保険料は約三千円であると承知しているが、その他のお尋ねについては、信用情報機関においても利用者の保険加入の有無は情報登録されていないため、お答えすることは困難である。


二の3について
消費者信用団体生命保険の保険金額、保険期間及び保険料については、約款等において定められており、必ずしも一律のものではないと承知している。
保険金については、約款等において定められているが、消費者信用団体生命保険は、保険金を被保険者の債務の弁済に充当することを目的とした保険であり、貸金業者が被保険者たる債務者に対して返済を求める金額を超えて保険金が支払われるものとはなっていないと承知している。
「被保険者の借入金額別にみた支払件数」については承知していないが、平成十八年三月末において消費者信用団体生命保険に加入している消費者向け無担保貸金業者等の平成十七年度の実績によれば、一人当たりの平均支払保険金額は、約六十万円であると承知している。


二の4について
消費者信用団体生命保険に関する被保険者の同意は、一般に、被保険者たる債務者と貸金業者が金銭消費貸借契約を締結する際に、書面により行われているものと承知している。
保険会社は、保険金受取人に対し、死亡保険金の請求に際して住民票や医師の死亡診断書等の書類の提出を求めているが、死亡診断書等の提出の省略を認める場合があると承知している。


二の5について
保険金の支払手続き等については、保険業法(平成七年法律第百五号)に基づく金融庁の認可を経た、各保険会社の約款で定められている。この約款においては、一般に、保険金受取人は、死亡保険金の請求に際し、住民票や医師の死亡診断書等の書類の提出が必要であること、保険会社はこれらの書類の一部の省略を認める場合があること、保険金は保険金受取人から請求書類が保険会社の本社に到達した日から一定期間内に支払うこと等が定められていると承知している。


なお、金融庁の要請により社団法人生命保険協会が作成した「消費者信用団体生命保険の実務運営に関するガイドライン」において、消費者活用団体生命保険に関する適正な保険金支払実務の在り方として、保険金の支払請求時に「遺族に請求内容が了知されていることを保険会社が確認する必要がある」旨を明確化し、その遵守を促しているところであると承知している。
 
 
 
 消費者金融各社は金融機関から二パーセントにも満たない超低金利で資金調達を行いながら、二十パーセントを超える高金利で利用者に貸付け、利益を上げている。消費者金融各社の背後には銀行、保険会社等といった大手金融機関の存在があるが、多重債務者の問題は、単に消費者金融業界の問題ではなく、銀行、保険会社等が、金融という資金循環を利用して、最終的に多重債務者からの資金を利益として得ているという点に、問題の本質がある。したがって、議論の前提として、このような金融業界の実態、そしてそれを監督する金融庁との関係を明確にする必要がある。なお、答弁に当たっては、金融機関の社会的責任を踏まえ、固有名詞を示されたい。

1 いわゆる都市銀行のほか、生命保険協会又は社団法人日本損害保険協会に加盟する会社(以下「大手金融機関各社」という。)と大手消費者金融各社間における貸付額及び貸付金利を明らかにされたい。

2 大手金融機関各社と大手消費者金融各社の資本関係について、出資関係を個別に明示されたい。また、相互間の役職員の派遣状況及びそれ以外の人的交流の状況について、役職名、時期・期間、人数をそれぞれ示されたい。

3 大手金融機関各社、大手消費者金融各社に対する金融庁からの天下りの実態について、金融庁離職後二年以内に限らず、すべての金融庁出身者の人数及び役職をそれぞれ示されたい。
三の1について
大手消費者金融会社各社の平成十八年三月期における有価証券報告書(以下「直近の有価証券報告書」という。)に記載されている、都市銀行、生命保険会社及び損害保険会社からの平成十八年三月末における一年以内返済予定長期借入金残高及び長期借入金残高の合計額は、次のとおりである。
アコム株式会社においては株式会社三菱東京UFJ銀行百十億円、日本生命保険相互会社百十五億九千六百万円、第一生命保険相互会社三百二億三百万円及び明治安田生命保険相互会社六百三億四千八百万円、アイフル株式会社においては株式会社三菱東京UFJ銀行二百億円及び第一生命保険相互会社四百八十四億三千五百万円、株式会社武富士においてはアメリカンファミリー ライフ アシュアランス カンパニー オブ コロンバス二百億円、プロミス株式会社においては株式会社三菱東京UFJ銀行百四十九億三千八百万円、株式会社三井住友銀行五百五億七千二百万円、日本生命保険相互会社七百九十三億四千万円、第一生命保険相互会社百三十九億六千九百万円、明治安田生命保険相互会社二百七十五億六千三百万円及び住友生命保険相互会社三百億五千九百万円、三洋信販株式会社においては株式会社三井住友銀行百六十六億一千五百万円、第一生命保険相互会社四十億九千八百万円、明治安田生命保険相互会社三十八億七千五百万円及び三井生命保険株式会社三十九億六千百万円となっている。
また、プロミス株式会社の直近の有価証券報告書においては、平成十八年三月末における株式会社三井住友銀行からの短期借入金残高が五十四億三千二百万円である旨が記載されている。
なお、御指摘の貸付金利については、直近の有価証券報告書において示されていない。


三の2について
大手消費者金融会社各社の直近の有価証券報告書に大株主として記載されている都市銀行、生命保険会社及び損害保険会社による株式所有割合は、プロミス株式会社においては株式会社三井住友銀行二〇・二二パーセント及び日本生命保険相互会社四・二三パーセントである。なお、アコム株式会社の直近の有価証券報告書においては、都市銀行を傘下に有する持株会社である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループによる株式所有割合が十二・九九パーセントとなっている。
また、生命保険会社における直近の有価証券報告書に大株主として記載されている大手消費者金融会社の株式所有割合は、大和生命保険株式会社においては三洋信販株式会社三・五八パーセントである。なお、生命保険会社を傘下に有する持株会社であるアクサ ジャパン ホールディング株式会社の直近の有価証券報告書においては、株式会社武富士による株式所有割合は〇・〇六パーセントとなっている。
都市銀行各行及び損害保険会社各社における直近の有価証券報告書において、大手消費者金融会社各社が大株主として記載されているものはない。
御指摘の人的交流の状況について、大手消費者金融会社各社における直近の有価証券報告書において記載されている者の現役職、入社時期及び出身金融機関・最終役職は、次のとおりである。

(1)アコム株式会社
取締役、平成十八年六月、株式会社三菱東京UFJ銀行・取締役副頭取。
常勤監査役、平成十六年六月、旧明治損害保険株式会社(現明治安田損害保険株式会社)・常務取締役。

(2)株式会社武富
取締役兼執行役員、平成十七年五月、旧株式会社協和銀行(現株式会社りそな銀行)。

(3)プロミス株式会社
取締役常務執行役員、平成十八年六月、株式会社三井住友銀行・千葉東法人営業部長。
取締役専務執行役員、平成七年四月、日本生命保険相互会社・国際保険部長。

(4)三洋信販株式会社
代表取締役社長、平成十八年四月、株式会社三井住友銀行・専務取締役。
取締役、平成十四年六月、旧株式会社さくら銀行(現株式会社三井住友銀行)・代表取締役会長。
取締役常務執行役員、平成十二年七月、旧株式会社さくら銀行(現株式会社三井住友銀行)・大阪支店営業第一部長。


なお、直近の有価証券報告書において、都市銀行各行、生命保険会社各社及び損害保険会社各社に大手消費者金融会社各社における経歴を有する旨が記載されている者はいない。


三の3について
国家公務員の退職後における再就職の状況は、公務を離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にないことから、金融庁に在籍したすべての職員の再就職状況についてお答えすることは困難であるが、金融庁において国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百三条第三項の規定に基づく承認手続を行い、人事院の承認を得て、都市銀行、社団法人生命保険協会若しくは社団法人日本損害保険協会に加盟する会社又は大手消費者金融会社各社に再就職した者は、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第三条第一項に基づき採用され任期満了により退職した者一名であり、役職は「インベストメント・アクチュアリー」となっている。
 
  四 新たな金融規制を導入するに当たって、その実態が明らかにされていなければ、新たな金融規制の効果すら検証することができない。にもかかわらず、金融庁の対応は、「問題が生じると業界にヒアリングや報告徴求を行う」という場当たり的な対応にとどまっている。さらに、金融行政は、事前規制から事後規制へ、事前の許認可から事後の監督へと移行したというが、実態の把握がなければ、事後監督に効果など期待できない。今回の消費者金融・多重債務者の問題をめぐり、金融の実態把握の必要性が指摘されていることを踏まえ、政府として、責任を持って金融の実態を把握し、その情報をデータベース化するシステムを構築して情報開示を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 四について
金融庁においては、金融機関に対する立入検査、報告徴求、日常のヒアリング等を通じて、日頃から金融機関の実態把握に努めているところである。把握した情報については、信用秩序の維持や金融機関の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ等の事情を勘案しつつ、必要に応じ、これを開示している。
 
 
  <貸金業法改正への問題点−質問主意書の答弁から>

荒井広幸の質問主意書(9月29日提出)に対する政府答弁書が本日、10月10日昼に出されました。答弁の内容は質問の趣旨を汲み取らず具体的実態を明らかにしようとしない責任逃れの体質を明らかにしたものです。
 さらに答弁書に先立ち、10月6日付で金融庁ホームページに荒井の質問趣旨に沿ったデータをほんの一部のみ公表したことは、実に姑息であります。
 また、多重債務者の実態について、金融庁が把握しているはずの全国信用情報センター連合会のデータに言及することなく、推計できないとしています。さらに質問した銀行・信販業界のクレジット取引などについても全く触れられていません。実に不誠実です。
よって、政府・与党による貸金業法改正案は、実態にのっとって作られたものとは考えられず、その多重債務などの発生防止対策の有効性を疑わざるを得ません。
 金融庁は昨年から庁内の懇談会で研究・対策を議論しているにもかかわらず、場当たり的に少しずつしかヒアリングと称する調査しかしておりません。業界の意向を受けた実態しか示さないのであれば、全体像がつかめず、根本的解決はできません。言ってみれば“金融界全体のグレーゾーン”を把握できるようにすべきです。
 まずは実態の早期把握を行うよう改めて強く求めるものであります。
しかし、わが党は少数のため、荒井には財金委員会等、関係委員会での質疑時間は与えられず、各党・マスコミ各社の協力を得て消費者、借り手サイドの立場から実効性ある貸金業法改正案にしたく存じます。ここに関係資料をご送付し、ご検討くださるようお願い申し上げます。
 
<多重債務問題は金融界のグレーゾーン問題である>
’06 10.11 参議院議員 荒井広幸


消費者金融利用者及び多重債務者等の実態解明等に関する質問主意書と答弁書のポイント

一−1 すべての信用情報機関のデータも踏まえた消費者向無担保金融利用者数の最新の推計
一−2 一人当たり平均借入社数・額・残高・延滞状況。借入社数別人数・額・残高・延滞状況
一−3 利息制限法上限金利を超える借入者数・件数・一人当たり借入額。実際の超過利息金額
(主な答弁) 総数の推計は困難。したがって、2及び3についても回答困難

【ポイント】 多重債務者の実態に関しては、各種の数字が示されているが、それらの数字には全く言及せず、「金融庁が責任をもって、実態として示せる数字はない」との答弁。全くの無責任であり、今後、金融庁が実態に言及するとしても、それには全く根拠がないと言わねばならない。また、言及される数字が業界データに基づくものであるとすれば、それは業界寄りの情報操作に他ならない。特に、消費者金融会社以外の銀行・信販等クレジット取引実態について触れられてもおらず、より深刻な実態とその原因を隠すもの。

二−1 大手消費者金融各社の消費者信用団体保険の付保状況。中小消費者金融各社の付保状況
消費者向無担保金融の利用者全体のうち、消費者信用団体保険の被保険者数・割合
二−2 一人当たり平均保険契約件数・保険金額。保険契約件数別人数・一人当たり平均借入額
二−3 消費者信用団体保険の保険金額、保険期間、保険料の実態。また、保険金が債務額を超過しない担保。実際の保険金支払いケースの借入金額別支払件数及び支払金額
(主な答弁) 被保険者数として1,343万人等の10月6日付の公表数値。また、平均保険料約3千円、平均支払額約60万円。実態は、約款等によるため、一律ではない。
【ポイント】 付保状況・支払い状況等の一部のみを答弁に先立ち、公表する姑息な手法。「債務者に返済を求める額を超えて保険金が支払われるものとはなっていない」と承知しているそうだが、実際の債務額を超えているかは不明であり、実態把握していないのだから、それが担保されているか、分かろうはずがない。
二−4 契約時の同意確認。死亡診断書の確認の方法。すべての事案における確認実施の有無
二−5 死亡診断書確認を不要とするなど、不当に消費者金融に有利な運用ルールに対する規制
(主な答弁) 死亡診断書の提出の省略を認める場合がある等の実態、保険業法の規制、ガイドラインの説明にとどまる。

【ポイント】 死亡診断書の提出の省略等が認められ、遺族に内容が了知されていない実態に対する規制に関しては、全く言及されていない。生保協会のガイドラインの作成は9月29日であり、これまでの実態に対する反省が全くない。

三−1 大手金融機関各社と大手消費者金融各社間の貸付額及び貸付金利
三−2 大手金融機関各社と大手消費者金融各社の資本関係。役職員の派遣状況等
三−3 大手金融機関各社、大手消費者金融各社に対する金融庁からの天下りの実態
(主な答弁) 公表されている有価証券報告書等のデータにとどまる。

【ポイント】 行政改革特別委員会における追及時のデータの更新に過ぎない。それでは足りないと言ってきた真意を踏まえていない。

四 新たな金融規制を導入するに当たって、その実態が明らかにされていなければ、新たな金融規制の効果すら検証することができない。にもかかわらず、金融庁の対応は、「問題が生じると業界にヒアリングや報告徴求を行う」という場当たり的な対応にとどまっている。さらに、金融行政は、事前規制から事後規制へ、事前の許認可から事後の監督へと移行したというが、実態の把握がなければ、事後監督に効果など期待できない。今回の消費者金融・多重債務者の問題をめぐり、金融の実態把握の必要性が指摘されていることを踏まえ、政府として、責任を持って金融の実態を把握し、その情報をデータベース化するシステムを構築して情報開示を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
(主な答弁) 検査等において実態把握。把握情報は必要に応じて開示

【ポイント】 今回の回答から実態把握が足りないことは明らか。検査等で実態を把握しているというのは責任逃れ。逆に、仮にこれ以上の情報を把握していながら、今回のような回答にとどめているのであるならば、金融庁の隠蔽体質の表れ


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【耐震強度偽装事件支援策に関する第三回質問主意書】

 総務会長 衆議院議員 滝 実

 耐震強度偽装事件のマンション居住者への公的支援について、これまで2回、質問主意書を提出し、政府の見解を質した。見過ごせない点が多いため、3回目の質問主意書を3月10日付で提出し、政府答弁書を3月22日付で受け取った。
 以下、質問主意書と政府答弁書を示したうえで、最後にこの問題についての私の見解をまとめる。



耐震強度偽装事件の被害者への公的支援策に関し二回にわたり質問主意書を提出し、答弁書をいただいたが、いくつかの疑問があるので、重ねて次の事項について質問する。
 
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
 
 建築物の耐震強度の判定は使用するソフトにより違いがあることを既に長野県が指摘しており、また構造計算にどういう計算方式を選択するかによって耐震強度の数値が大きく変わるといわれている。国土交通省が認めている構造計算のどの計算方式を選択するかは建築コストを切り下げるために利用されているといわれているが、一つの方式では強度不足、他の方式では問題なしという場合がありうることに国土交通省はどう考えているのか。
一について
 建築基準法施行令第81条第1項においては、建築物の構造に関する安全性を確かめるために用いる複数の構造計算が定められているところであり、国土交通省としては、設計者の判断により適切な構造計算が選択されるものであると考えている。

 
 
 構造計算の実際は複雑で設計者でなければ解からない部分がありうるのではないか。そうであれば、建築確認には限界があり、建築主事や民間の検査機関に構造計算の偽装を見破る能力を期待するのは無理ではないのか。
  もともと昭和二十六年の建築基準法案の国会審議でも建設省は建築主事の資格要件として、一級建築士の資格に行政能力を兼ね備えていることとしていたのであって、全知全能の神さまを想定していたわけではない。
  従って、建築確認に建築物の安全なことを保証するかのような誤解を招くようなことは改めるべきと思われるがどう考えているのか。
二について
 今回の構造計算書の偽装問題を受け、指定確認検査機関への立入検査などにより建築基準法第6条第1項又は第6条の2第1項の確認に関する事務の総点検を行うとともに、社会資本整備審議会建築分科会において、建築物の安全性確保のための建築行政の有り方について検討が行われているところである。
  同分科会が平成18年2月24日に取りまとめた中間報告においては、偽装問題の再発防止の観点から、建築主事又は指定確認検査機関が建築確認を行う場合に、一定の建築物については、第三者機関による構造計算書の内容の審査を義務付けること等が示されたところであり、今後、同報告を踏まえ、建築物の安全性確保のため、建築確認制度について所要の改正に取り組んでまいりたい。
 
 
 平成十八年二月二日提出の「耐震強度偽装事件の被害者への公的支援策に関する質問主意書」に対する答弁書で、建築主が契約上の瑕疵担保責任を誠実に履行する見通しが全く立っていない現状では、「売主である建築主に対して徹底した責任の追及を行うことを前提として」、公的支援を行う必要があるとしている。
  しかし、国や地方公共団体は瑕疵担保責任を追及できるものではなく、買主が瑕疵担保責任を追及した場合には、国や地方団体は買主に対して不当利得の返還を求めるという無様なことをしなければならない。これをどう考えているのか。

三について
 御指摘の瑕疵担保責任の追及については、偽装問題に係る危険な分譲マンションの買主である居住者が当該マンションの売主である建築主に対して行うものであるが、国又は地方公共団体としても、当該居住者が売主に対して有している損害賠償請求権のうち当該居住者に対して行った公的な支援に見合う額の請求権を取得すること等により当該建築主に対する責任の追及を行うこととしており、御指摘の「買主に対して不当利得の返還を求める」ことはないものと考えている。

 
 
 また「類似の財政措置との均衡にも配慮した上で」、公的支援を行うのであれば買主の所得制限を要件にするということになるはずであるのに、そのように見えないのはなぜか。
四について
 今回の公的な支援は、助成の対象となる者について所得要件を設けていない助成制度も含めた類似の財政措置との均衡に配慮して行うものである。

 
 
 今回の公的支援策は建築主の瑕疵担保責任を差し置いて国が関与する結果になる。それほど国が肩入れするのは国に責任があるからだとしか考えられない。そのような責任があるならば、関係者の責任を併せて追及しなければ納得できるものではないという意見をどう考えているのか。
五について
 今回の公的な支援を行うこととした理由は、先の答弁書で述べたとおりであり、今回の偽装問題に係る関係者の法的責任については、最終的には司法の場において個別具体の事実関係に即して判断されるものと考えている。
 
 
 国の責任を前提としていないのであれば、自然災害による住宅被害について、直ちに積極的な支援策を講じるべきであるという意見があるのをどう考えているのか。
六について
 自然災害による住宅被害について、被災者の住宅再建に対して地方公共団体が助成しようとする場合には、今回の公的な支援に活用した地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法に基づく地域住宅交付金等の活用が可能であると考えている。

 
  (耐震強度偽装事件の被害者への公的支援の問題点)

1 建築確認について
 建築物については建築主が責任をもつことが、建築物の安全性を確保するための必要条件であろう。安全性の基準として建築基準法施行令の構造計算の定めが示されているように、どの方式を選択して安全性についてどのように考えているかは設計者でなければ解からない。
 それを国土交通省は建築確認にあたり構造計算書の審査を義務付ける方向をとりたいとしている。しかし、そのようなことが出来るものではないし、建築主の責任を「公」が代わって行おうとすることは、方向を間違えている。

2 公的支援に見合う金額の請求権をマンション居住者に代わって「公」が追及することについて
 欠陥マンションの瑕疵担保責任を建築主に代わって「公」が行う結果、公的支援部分について居住者から請求権を譲り受けて「公」が建築主に瑕疵担保責任を追及すると国土交通省は答弁している。これは漫画でしかないし、そのために「公」は取り立て経費まで負担しなければならないのだ。小さな政府を国の大方針に掲げながらなんということだ。「公」の負担は全て税金で賄うことを忘れた、呆れた対応だ。


3 関係者の法的責任
 建築確認の関係者の法的責任は司法の判断に任せるという。なんと主体性がないことだ。
これでは責任追及に納税者が立ち上がらなければだめなことを国が挑発しているに等しい。

4 条件に制約のない今回の支援措置
 今回の公的支援措置は類似の措置に従ったというが、これは全く違う。災害による住宅の被害についての公的支援は本人の所得により対象外とされ、金額も低い額に抑えられてきた。今回の措置はそのような制約はない。これを類似の措置に従うというのは、偽装である。

5 結論
 今回の公的支援は建築主の財産状況を調査しないまま、国土交通省がなぜか慌てて作り上げた支援策であり、責任ある対応に欠けていると言わざるをえない。しかも国の負担は納税者の負担であることを忘れていることは問題だ。

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【耐震偽装事件公的支援策で再質問主意書】
 総務会長 衆議院議員 滝 実

 耐震強度偽装事件で政府が打ち出したマンション居住者への公的支援について、前回、質問主意書に対して2月10日付の政府答弁書を受け取ったが、納得できない点があったため、再質問主意書を提出し、2月24日付で答弁書を受け取った。しかし、政府は今回も質問にまともに答えておらず、この公的支援が我が国の法体系上、無理があることが一層浮き彫りになった。
この問題は今後も追及を続けていく。
以下、再質問主意書と政府答弁書を示す。



【耐震強度偽装事件の被害者への公的支援策に関する再質問主意書】

 標記案件については、平成十八年二月二日に質問主意書を提出し、内閣から同年二月十日付けで答弁書を受領した。しかし、回答が不明確な部分があるので、追加質問する。

 
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
 
 答弁書は、建築主、建築士、工事施工者、建築主事のそれぞれの責任を並列的に述べているが、そのようなことを質問してはいない。平成十年の建築基準法改正案の国会質疑で、政府は建築物について建築主が設計者と工事施工者を監督する責任があると言い切り、建築主事の責任はそれを補完するに過ぎないと答弁している。答弁書の「三について」の記述は、この原則に変更がないようにも受け取れるが、そうであるのかを明確に答えていただきたい。 
一について
ご指摘の平成10年の建築基準法改正案の国会質疑における答弁が具体的にどの答弁を指すのかが必ずしも明らかではないが、建築主に建築物の安全を確保する第一義的な義務が課されていること等については、先の答弁書一についてで述べたとおりである。

 
  二 
  答弁書は、マンションの売主である建築主が契約上の瑕疵担保責任を誠実に履行する見通しが全く立っていないから公的支援を行うと述べている。しかし、今回のような事件は、買主が瑕疵担保責任を民事の司法手続きにより追及すべきであって、これに近いことが答弁書の「三について」に述べられているのに、司法手続きを差し置いて行政当局が立ち入ることは、わが国の瑕疵担保責任に関する法体系を混乱させることになる。
  また、答弁書は、今回の公的支援は類似の財政措置との均衡にも配慮していると述べている。これは、阪神淡路大震災における救済措置や自然災害の被災者に対する救済措置を指すと思われるが、前者は災害救助法に、後者は被災者生活再建支援法に根拠をおくものであって、瑕疵担保責任を追及できる場合とは異なる。
  以上二点について考えを示していただきたい。
二について
 今回の構造計算書の偽装問題に係る危険な分譲マンションの居住者に対して公的な支援を行うこととした理由は、前回答弁書二についてで述べたとおりであり、緊急性等の観点から、公的な支援を行う必要があると判断したものである。
 また、今回の公的な支援を行うことは、偽装問題にかかる危険な分譲マンションの売主である建築主の瑕疵担保責任に影響を与えるものではない。

 
 
 答弁書は、今回の公的支援を「地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法」に基づく地域住宅交付金を活用して行うとしている。しかし、お示しの特別措置法による交付金を今回の公的支援に活用するのは法律の目的を逸脱するものであって、地方公共団体が地域住宅交付金を活用して公的支援を行うのは違法ないしは不当であると思われるが、これについて考えを示していただきたい。
三について
 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法は、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等を、地方公共団体の自主性を尊重しつつ推進するため、地域住宅交付金の交付等の特別の措置を講じ、もって国民生活の安定と豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的としている。
 今回の公的な支援については、偽装問題に係る危険な分譲マンションの建替え等という地域における住宅に対する需要に応じて、関係地方公共団体が当該分譲マンションの建替え等について公的賃貸住宅等の整備等として同法に基づく地域住宅交付金を活用して取り組むことにより、当該分譲マンションの居住者等の安全と居住の安定の確保を図ろうとするものであるところ、同法に基づく地域住宅交付金を活用することは、同法の目的を逸脱するとのご指摘は当たらないものと考えている。


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【耐震偽装事件支援策に異議あり】
  総務会長 衆議院議員 滝 実


 新党日本は、国会議員が政府の方針を質す「質問主意書」を提出し、それに対して政府が閣議決定した「答弁書」で答える制度を活用して、様々な問題を追及することに力を入れることにしている。
 2006年の第一弾として、耐震強度偽装事件の被害者への公的支援策について質問主意書を提出した。この支援策は「公の関与のあり方」に問題があると考えているからだ。2月10日付で内閣総理大臣小泉純一郎名の政府答弁書を受け取った。
以下、質問主意書と政府答弁書を紹介すると共に問題点を指摘する。


【質問主意書】

 姉歯設計事務所による耐震強度偽装事件が公表された後、短期間で被害者に対する政府の公的支援策が打ち出された。
  この事件は誰に責任があるのかを含め事実関係を解明している途中であるに、建築主を差し置いて政府が支援に乗り出すという点で、不思議なことといわなければならない。
  被害者救済ということで何をしても許されるものではなく、公的支援ついて協力を要請されている地方公共団体には戸惑いがある。
従って、次の事項について質問する。

 
 
【質問主意書】
【政府答弁書の内容】
 
  (一)
 平成十年の建築基準法改正法案の国会審議における政府答弁は、建築物について建築主が設計者と工事施工者を監督する責任があり、建築確認の実施主体は補完責任を負うに過ぎないとしている。
この原則は現在も変わりないのかどうか明らかにしていただきたい。
(一) について
 建築基準法は、建築物に関する最低の基準を定めており、すべての建築物は、同法の規定に適合する必要がある。このため、同法においては、建築主は、建築物を建築しようとする場合には、同法第六条第一項又は第六条の二第一項の確認を受けなければならないとされており、建築主に建築物の安全を確保する第一義的な義務を課しているところである。
  また、建築士については、建築士法第十八条第二項の規定により、設計を行う場合においては、これを法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならず、工事施工者については、建築基準法第五条の四第一項の規定により、建築士の設計によらなければ、建築士法第三条から第三条の三までに規定する建築物の工事をすることができないこととされている。
 一方、建築確認を行う建築主事又は指定確認検査機関は、建築主に課されている第一義的な義務の的確な履行を確保する観点から、建築主からの申請に基づき当該申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることを確認しているものである。
 
  (二)
  今回の偽装事件は「民の問題ではない」との国土交通大臣の発言を契機に、政府が公的支援を打ち出したようであるが、建築確認に問題があったとの認識で公的支援を行うのか、それとも建築確認の問題にかかわりなく行うのかを明らかにしていただきたい。
(二) について
 今回の構造計算書の偽装問題に係る危険な分譲マンションの居住者等について、その安全と居住の安定を確保することは、緊急に取り組むべき最優先の課題である。また、今回の偽装問題には、建築確認にかかる審査という公の事務において、結果として構造計算書の偽装が発見されるに至らなかったという特別な事情がある。
  こうしたことから、当該マンションの売主である建築主が契約上の瑕疵担保責任を誠実に履行するに見通しが全く立っていない現状では、売主である建築主に対して徹底した責任の追及を行うことを前提として、類似の財政措置との均衡にも配慮した上で、当該居住者に対する公的な支援を行う必要があると考えている。
 
  (三)
 建築確認に問題があったとの理由であれば、事実の全容を明らかにする必要がある。建築物について建築主、設計者、工事施工者に責任があるのは当然であり、これらの者が意図して建築確認の実施者を誤魔化す場合には建築確認の実施者が責任を負うことはできないことが想定されるからである。
  政府が支援策を行うのは、このような誤魔化しはないと判断したことになるが、そうなのか。仮にそうだとしても、建築確認の実施者が民間検査機関であれば「官」が責任を負うことにはならないのではないか。
 他方、建築確認の問題にかかわりなくとの理由であれば、建築物について建築主、設計者、工事施工者が負う自己責任を「官」が肩代わりすることになるのではないか。
これらの指摘したことについて、考え方をお示しいただきたい。
(三) について
 一について述べたとおり、建築主は、建築物の安全を確保する第一義的な義務を負っており、一方、建築確認を行う建築主事又は指定確認検査機関は、建築主に課されている第一義的な義務の的確な履行を確保する観点から、建築主からの申請に基づき当該申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることを確認しているものである。
  今回の偽装問題は、建築主からの委託等に基づき設計を行った者又は建築主から委託等を受けた設計者若しくは工事施工者からの委託等に基づき設計を行った者が故意に構造計算書を偽造したものであり、建築主の責任は重いものと考えている。
 今回、公的な支援を行うこととした理由は、二についてで述べたとおりであり、「建築主、設計者、工事施工者が負う自己責任を「官」が肩代わりする」ものではない。
 指定確認検査機関が行った建築確認について、お尋ねの「官」が責任を負うか否かについては、偽装問題の全容が解明された後で、最終的には司法の場において個別具体の事実関係に即して判断されるものと考える。
 
  (四)
公的支援策について地方公共団体に協力を求めているようであるが、そのためには法律の裏づけが必要と思われる。これについての考え方をお示しいただきたい。
(四) について
 今回の公的な支援は、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法に基づく地域住宅交付金を活用して行うものである。偽装問題に係る危険な分譲マンションの居住者等の安全と居住の安定を早急に確保することについて、国と関係地方公共団体との間で認識の相違はないものと考えており、今後とも、関係地方公共団体と十分に連携を図りながら取り組んでまいりたい。
 
以上が質問主意書と、それに対する政府の答弁書だが、答弁書の内容には異議がある。
 1、政府の答弁書によれば、建築物に対する責任は建築主が負うとしているのに、その建築主が契約上の瑕疵担保責任を誠実に履行する見通しが全く立っていないから、建築物の買い手に公的支援を行うというのはおかしい。瑕疵担保責任は民事の司法手続きにより解決すべきであり、その手続きを差し置いて行政当局が出るものではない。
 2、また、今回の公的支援は類似の財政措置との均衡にも配慮したというが、これも何が均衡か意味不明である。類似のものは阪神大震災における支援措置やその後の自然災害における生活支援法の措置を指すと思われるが、いずれも災害の支援として法律に根拠をおくものである。
 3、地域住宅交付金を活用するということになれば、瑕疵担保責任の制度は住宅について適用されなくなる。


耐震強度偽造事件の公的支援策の問題点は以上だが、新党日本では今後も「質問主意書」を活用して、政府を厳しく追求していく。

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