11/01/24 政権交代から奈落の底!?◆共同Weekly

「行財政改革」は、山国で知事を務めていた往時、私が心して用いなかった用語の一つです。
徹頭徹尾、「行政改革」を断行する前に、「財政改革」と称する羊頭狗肉(くにく)な「増税」へ逃げ込む”方便”として役人に使われてしまう、と察知したからです。
菅再改造内閣が掲げる「消費税を含む税と社会保障制度の一体改革」なる惹句(じゃっく)にも、同じような臭いが・・・。敢行すべき「行政改革」があまた存在しているからです。 一昨年の衆院総選挙で、金科玉条のごとく、民主党マニフェスト(政権公約)に明記していた「国家公務員の総人件費2割削減」はなぜ雲散霧消してしまったのでしょう?
公務員制度改革とは、定数削減に留まらぬ、給与・人事体系の抜本的再構築。余剰人員を抱える省庁から他部署への配置転換も、民間企業ならば当然の発想です。県民所得の2倍近い地方公務員給与の見直しも、政府が各自治体に求めてこそ、”国家公務員に厳しく、地方公務員に優しい民主党の“汚名返上”。「地域主権」とは国と地方の対等関係を意味する、と彼らは繰り返し述べてきたではありませんか。自治体職員給与も、その原資は税金です。
今年は、宰相自ら期限を区切った6月に向けて、「官僚主導の増税」か「政治主導の改革」かの、いずれを選択するかが最大課題となるでしょう。
消費税率うんぬんといった、ベースアップを巡(めぐ)っての労使交渉の如き小手先の修正ではなく、世界の歴史に類を見ない“超少子・超高齢社会ニッポン”の再興へ繋(つな)がる税制と社会保障制度の大刷新でなくては、自公連立時代の「100年安心年金」同様、早晩行き詰まってしまいます。
乳幼児から高齢者まで全ての国民に一定金額を毎月支給する、新党日本がマニフェストに掲げている「ベーシック・インカム=BI」を導入し、議員の口利きが横行する生活保護の“裁量行政”に決別すべきです。
1989年に65万世帯だった生活保護世帯は2009年に130万世帯と倍増、そして昨年末には141万世帯へと急増し、今や最低賃金が生活保護を下回る都道府県が4分の1に達しているのです。
他方、「法人税」の減免が日本経済を立て直す、と菅内閣は捉えていますが、本当でしょうか?
十数年に亘(わた)って法人税を1円も納めていない大メガバンクに留(とど)まらず、上場企業の7割近くが同様に法人税を納めていない現実を踏まえて、利益に対する課税でなく、支出に対する課税=外形標準課税を本格導入し、広く薄く納税する法人税へと改善すべきです。
山国での苦い経験がまたよみがえります。精密機器の雄として知られ、資本金500億円、連結売上高1兆円を誇る企業が本社を構えていましたが、知事就任の翌年、赤字転落し、法人事業税の納税額がゼロに。債務超過が続く電気機器メーカーの親会社となったためで、欠損が生じれば、最大7年間に亘って「合法的」に免税となります。莫大(ばくだい)なテレビCMを流す1兆円企業が、住民税に当たる法人県民税を年間僅か80万円納めるだけ。これこそ、宰相が宣(のたも)うた「正すべき不条理」!こうしたことすら改めずに「玉砕」したなら、国民は「政権交代」から「奈落の底」です。