11/05/12 説教強盗の増税ではなく新しい方程式を◆日刊ゲンダイ
開闢(かいびゃく)以来の事態に直面した”日出ずる国ニッポン”は、であればこそ他国に先駆け、哀しみを悦(よろこ)びへと変換する「新しい方程式」を編み出すコペルニクス的資格を付与されたのです。
既に強兵は敗戦で終焉し、富国も今回の地震、津波、放射能で怪しくなりました。「科学を信じて・技術を疑わぬ」20世紀型の富国強兵国家から、「科学を用いて・技術を超える」21世紀型の経世済民(けいせいさいみん)国家への大転換が求められています。
金融機関の不労所得と化している年間1千億円に上る「休眠口座」の有効活用。米国債を主体に80兆円を優に超える政府保有外国債を担保に日銀直接引受国債の発行。先月29日の衆議院予算委員会でも詳説した復興無利子国債の発行。
こうした「新しい方程式」を決断せず、”説教強盗”の如き増税を実施したなら、景気も人心も疲弊し、経世済民どころか”日沈む国ニッポン”へと転落不可避です。
が、東京電力が存続せねば大混乱に陥る、と供給側の都合で「古い方程式」の枠組みに拘泥し、強きを助け・弱きを挫(くじ)く「政官財学報」ペンタゴンが存在します。「学」は御用学者、「報」は護送船団記者クラブです。
無論、ペンタゴンの中にも、数少なき勇士は居ます。「AERA」編集部の畏友・大鹿靖明氏は今週号で、「東京電力は放射能を撒き散らす原因企業。なのに、賠償金は税金と電気代の引き上げ。国民の懐を当てにする。民主党が構想しているのは、そんな経済スキーム」と看破しました。
「東電の存続を前提にしてはダメだ。逆立ちしても鼻血が出ないぐらいまで賠償金を払わせるべきだ」と喝破する自由民主党の河野太郎氏も、原理主義とは対極の勇士。
太陽光発電パネルの製造事業所を被災地に複数新設し、全国の全ての建造物にパネル設置を義務付ける「新しい方程式」こそ、被災地での雇用創出に留まらぬ日本全体の産業構造転換を促します。無体な話に非(あら)ず。「国策」の地上デジタル放送は、高額な受信機購入を国民に強いたのです。
「震災の象徴として残して欲しい気持も無くはない」。岩手県大槌町の建物に乗り上げた遊覧船「はまゆり」の撤去作業を昨日、見守っていた機関長の述懐を「産経新聞」は紹介しました。被災地の一廓を保全し、津波研究所や震災博物館を隣接すべきです。広島の原爆ドームと同様、全世界から人々が訪れる、歴史を忘却しない学習空間となります。是も又、「新しい方程式」です。