11/05/16 新方程式への大転換を◆共同Weekly
開闢(かいびゃく)以来の事態を迎えた日本は、「科学を信じて、技術を疑わぬ」20世紀の方程式から「科学を用いて、技術を超える」21世紀の新しい方程式へと、大転換せねばなりません。
船舶が建物に乗り上げた津波の被災地は、その一角を保全し、「津波研究所」や「震災博物館」を設けるべきです。歴史を忘却させない象徴として、広島の原爆ドームと同様、全世界から人々が訪れる空間となります。
1970年代には技術開発力も市場占有率も日本が世界一だった太陽光発電は国策とならず、今や中国やドイツの後塵(こうじん)を拝しています。福島、宮城、岩手で各県2カ所、太陽光発電パネルの製造事業所を新設し、全国の新設・既存の建造物にソーラーパネル設置を法律で義務付け、放射能で世界に対する加害国となった汚名を挽回すべきです。
決して無体な話ではありません。国策として推進した地上デジタル放送は、高額な受信機が短期間に普及したではありませんか。東京電力が存続せねば大混乱に陥る、と供給側の都合で「古い方程式」の枠組みに縛られるのではなく、消費側の希望に根差した「新しい方程式」を用い、被災地での雇用創出にとどまらず、日本全体の産業構造を21世紀型へと大転換してこそ、無念の最期を遂げた同胞への鎮魂だと思います。
震災復興の2011年度第1次補正予算を審議した4月29日の衆院予算委員会で、日本を産油国にする藻・オーランチオキトリウムに触れました。
筑波大の渡邉信教授が昨年発見したオーランチオキトリウムは、1ヘクタール当たり年間1万トンの炭化水素を生成します。光合成に頼らず、有機排水をエサとしてオイルを生産する画期的なエネルギーシフト。2万ヘクタールで日本の年間石油消費量を賄える計算で、これはくしくも津波の被災農地と同じ面積です。今後膨大な税金を投ずる除塩の土地改良事業を行っても、いずれ再び津波に襲われる場所ならば、営農意欲を有する者には周辺の休耕田と換地を行い、湿地帯として石油生産基地に転用した方がはるかに勇気と希望を与え、国民益となります。
増税で景気浮揚した国家は、古今東西いずこにも存在せずと繰り返してきました。「説教強盗」のごとく、増税を唱える政治家や学者は「古い方程式」から脱却できぬ、かわいそうな人々です。
金融機関の不労所得と化している「休眠口座」は年間1千億円近く。英国では、こうした資金を社会的共通資本の整備に用いる法律が存在しており、日本も倣うべきです。日本が保有する80兆円の外国債を担保に「日本銀行直接引き受け」で、「復興国債」も発行すべきでしょう。政府が日銀に支払う利子は国庫納付金として戻ってきますから、国民負担なし、といえます。
また、70歳以上の国民の金融資産約369兆円。いずれ相続・贈与税が課せられる、タンス預金を含むこうした資産を、3年の時限立法で生前贈与を非課税とし、その半分は復興無利子国債購入を義務付ける…。
とまれ、開闢以来の事態を乗り越えるには行政の常識にとらわれない、真の「政治主導」を行い得る、直感力と洞察力、構想力に構築力、そして決断力と行動力を併せ持った指導者の活躍こそが不可欠です。