ニッポン維新(114)改革のためにー14

5月4日付の朝日新聞がウィキリークスから提供されたアメリカ政府の外交文書を公表しました。それによってこれまで「ニッポン維新」に書いてきた事が裏付けられています。

2008年12月に在日アメリカ大使館から国務省に送られた公電は、沖縄の海兵隊がグアムに移転する費用を日本側に負担させるため、実際には必要のない軍用道路の建設費を計画に盛り込み、日本の負担比率を低く見せかける工作をしたことを示しています。

それによって実際には66%にのぼる日本側負担が59%と6割を切るように操作されました。そもそも米軍がアメリカの領土であるグアムに移転するのに、その費用を日本国民の税金で賄う事自体がおかしいのですが、日本政府もこの粉飾を了承したと言いますから、自公政権はアメリカ政府と共に日本国民を騙していた事になります。

その頃沖縄で総領事を務めていたケビン・メア氏は国務省日本部長をしていた2010年に問題発言をした事が明らかとなり、今年3月に更迭されました。メディアは「沖縄はゆすりの名人」と発言した部分にスポットを当て、沖縄を侮辱した側面のみを報じていますが、メア発言の重要部分は他の所にあります。

それは「日本が憲法を変えて米軍を必要としなくなれば、アメリカにとっては良くない。アメリカの利益のために日本の土地を使用することが出来なくなり、日本政府が支払っている高い金が受け取れなくなる」という発言です。ここに日米関係の本質があります。

つまり「日米同盟」の表は安全保障問題ですが、裏にあるのは「金のなる木」である日本から金を搾り取る構図なのです。それが明るみに出ようとしたのでアメリカ政府は慌てました。そこが注目される前にメア氏を更迭しました。

自公政権はアメリカ政府と共に国民を欺いてきましたが、民主党政権が誕生すると事情は異なります。民主党はアメリカとの「対等な関係」を主張し、アメリカ一辺倒の外交姿勢から「東アジア共同体」を視野に入れた外交姿勢に変わりました。アメリカから見れば利益にならない方向に日本が踏み出そうとしたのです。

しかしそれは日本国民が選挙で選択した方向ですから、アメリカがとやかく言える問題ではありません。ところが日本の官僚がアメリカ政府に民主党政権と妥協しないよう働きかけ、民主党政権を「愚か」だと言っている事が、ウィキリークスによって明らかになりました。

外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長(当時)が鳩山政権発足直後の09年9月、キャンベル国務次官補に民主党政権を「愚か」と批判し、防衛省の高見沢将林防衛政策局長は民主党政権に「柔軟さを見せるべきではない」と助言しているのです。さらに12月には外務官僚が在日大使館の政務担当者に対し、「普天間移設問題でアメリカ政府は譲歩するな」と発言したことが公電で明らかにされています。

鳩山総理を「ルーピー」と書いたのは「ワシントン・ポスト」紙ですが、その前に日本の官僚が同様の事をアメリカ政府に言っていた訳です。「ワシントン・ポスト」紙のコラムニストはどこからかその話を聞き、そうした表現を使うことにしたのかも知れません。

こうしたことから分かるように国民が選挙で選んだ政権の前に立ちふさがるのは、野党ではなく、国民が選択する事の出来ない官僚機構と戦後の日本を従属させてきたアメリカの存在があるのです。その事をしっかり確認しておくことが日本国民にとって必要です。

どのような政党が政権を握るにしろ官僚機構やアメリカの抵抗にうち勝つためには国民の支持を背景にするしかありません。従って国民が問題の所在を認識できないと国民の望む政治が実現するはずはありません。政党同士の戦いだけでなく、その背後にある権力の動きを捉えないと「主権在民」の政治は実現しないのです。(続く)