12/09/03 間違った「決められる政治」◆共同Weekly
内政も外政も「決められない政治」が野田政権下で続いています。
昨年12月の韓首脳会談で、竹島問題は一言も触れられませんでした。今年2月の予算委員会で質すと、外務大臣レベルで話し合うべき事象だと首相は答弁。領土問題は優先度が低い、と捉えていたのです。
北方対策本部しか存在しない内閣府に、領土・領海を統合的に担当する部署を設置すべき、と提言した僕への答弁も、「検討する」と後ろ向き。行政用語で「検討」は、即断・即決せず、棚晒しを意味します。その程度の認識だった首相は、竹島、尖閣諸島に関する2つの国会決議が8月24日に行われるや、「最大の責任は平和を守り、国民の安全を保証する事だ。国の主権を守り、ふるさとの領土、領海を守る」と胸を張りました。
が、その緊急会見でも「領土・領海部」の設置を始めとする具体的な方策は、何も語られなかったのです。竹島の実効支配を画策する韓国政府を“他山の石”として、悪天候時の避難港と灯台、高出力の無線基地を尖閣諸島に設置。この程度は言明すべきでした。
領海侵犯を水際で阻止もせず、日本が実効支配する尖閣諸島への先方の上陸を鷹揚に待ち構えていた政府の対応こそ、「決められない政治」そのものです。
「福島の再生なくして日本の再生なし」と首相会見で約束した内閣発足から丸一年。その対応と成果は、進展どころか逆に悪化の一途です。
無色・透明・無臭で人間の五感が察知し得ぬ放射能は、煮ても焼いても流しても消え去らない厄介な存在。除染は「移染」に過ぎず、更なる被曝の悲劇を生み出します。にも拘らず、人口6千人の飯舘村で、ゼネコンや東電関連企業が元請けした除染費用は現時点でも3200億円。村民1人当たり5千万円強。
無謀な真珠湾攻撃から70年目の昨年12月8日、「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」=国会事故調の初会合で僕は、フクイチ周辺は「放射能に占領された領土」。30km圏内は核廃棄物最終処分場として居住禁止区域に設定し、愛着を抱く郷里から離れる当該住民には新たな住居と職業を保証・提供すべき、と陳述しました。
一方、福島県内の子供の甲状腺検査を「差配」する日本甲状腺学会理事長の山下俊一・福島県立医大副学長は財務官僚も顔負けな、「国民の安全を保証する」よりも「行政の面子を優先する」放言を繰り返し、医学者とは思えぬ問題先送りの隠蔽体質だと保護者から怒りの声が上がっています。
曰く、「チェルノブイリ事故後、ウクライナでは健康影響を巡る訴訟が多発し、補償費用が国家予算を圧迫した。そうなった時の最終的な被害者は国民だ。日本という国が崩壊しないように導きたい」と。
指弾されるべき「ムラ」は原子力ムラに留まりません。政治ムラ、行政ムラは元より、医学ムラも経済ムラも報道ムラも、既得権益の堅持に汲汲とし、事実を隠蔽する“見ざる・言わざる・聞かざる”状態なのです。
毎週金曜夕刻、1万人を超える人々が首相官邸前や国会正門前に「再稼働反対」で集うのも、責任の所在すら明確にせず、目指すべき未来も国民に提示せず、無為無策な混迷が続く「3・11」以降の政治に対する異議申し立て。僕も日本を憂う国民の1人として毎週、非暴力・不服従を象徴する白い風船を数千個、参加者に手渡しています。動員型デモとは対極の新しいムーブメントです。
抗議活動終了時、「再稼働反対」と呟きながらセフティ・コーンを片付ける機動隊員に幾度か出会しました。自衛隊員と共に凄惨(せいさん)な被災地の現場で活動した彼らも、組織の一員である前に1人の国民として、消費税・再稼働・TPPに代表される間違った「決められる政治」に疑問を感じているのでしょう。
その“声なき声”に気付いていないのは、官邸内に籠城する一部の政治家だけになりつつある平成24年の晩夏です。
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